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  • 周術期の抗凝固療法管理 Management of anticoagulation during perioperative period

    2022/07/04 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    観血的処置時には抗凝固薬の休薬の必要性を判断する必要がある。その際には抗凝固薬の種類、抗凝固薬の対象疾患と血栓塞栓症のリスク、観血的処置時の出血のリスクなどを考慮し、患者ごとに判断する1)。観血的処置を行う医師は抗凝固療法を行っている医師と休薬の可否に関して必要時は話し合う。休薬する際は血栓塞栓症のリスクを否定できないので、観血的処置を行う医師は患者から休薬に関する同意書を得るべきである。観血的処置時の抗凝固療法の管理に関するエビデンスは十分に整っていないが、いくつかの分野では研究が進み、ガイドラインが整備されつつある。抜歯に関しては、ワルファリン療法中はINRが治療域内であることを確認し、継続下での抜歯が進められ、直接経口抗凝固薬(DOAC)は血中濃度のピーク時を避けて内服6-7時間以降での抜歯が勧められる1-3)。白内障の手術時は角膜や水晶体を切開するが、血液が供給されていない器官で出血しないため、抗凝固薬を継続する1)。消化器内視鏡においては、内視鏡での観察時は休薬不要、生検や出血低リスク手技時は、INR治療域内でのワルファリン継続下で、DOACは血中濃度ピーク時を避けて継続下で行う。出血高リスクの場合、ワルファリンは3-5日間の休薬とヘパリン置換、DOACは当日休薬翌日再開が推奨されている4)。出血高リスクの外科手術の場合、ヘパリン置換時の出血リスクを勘案し、ヘパリン置換なしで休薬を考慮できる。しかし、血栓塞栓症のリスクが高い、機械弁、リウマチ性僧帽弁狭窄症、非弁膜症性心房細動で3か月以内の脳梗塞既往例、CHADS2スコア高値(CHADS2≧4)例ではヘパリン置換を、ワルファリン療法例では行うべきであり、DOAC療法例では考慮できる1)

    引用文献

    1) 日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会:2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン, 2020.  https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf

    2) 石川英一,矢坂正弘他:観血的医療処置時の抗血栓薬の 適切な管理に関する研究(MARK研究) 。-アンケートを用いた全国実態調査-,脳卒中 35:425-431,2013.

    3) 日本有病者歯科医療学会/日本口腔外科学会/日本老年歯科医学会:抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版. 学術者、東京、2020年

    4) Yoshikawa H, Yoshida M, et al.: Safety of tooth extraction in patients receiving direct oral anticoagulant treatment versus warfarin: a prospective observation study.  Int J Oral Maxillofac Surg 2019;48:1102-1108

    5) 加藤元嗣,上堂文也,他.抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン:直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補 2017.Gastroenterol Endosc 2017; 59: 1547–1558.