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プレカリクレイン欠乏症 prekallikrein deficiency
解説
1)概念
術前検査などで偶然に無症状の著明な活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)延長症例に遭遇した場合に、本症例を疑い検査を進める。文献的には約80症例のプレカリクレイン欠乏症が報告されているが、症状がないためほとんどの症例が見逃されており、実際の頻度は不明である。欠損症と分子異常症の報告がある。
2)症状
APTTが著明に延長しているが、出血傾向は認めない。一方、線溶能の低下による血栓症の報告もあるが、その発症頻度は正常者と有意差はない。つまり、出血や血栓症発症の報告がわずかにあるが、そのイベントは関連する危険因子によるものであり、プレカリクレイン欠損は無関係であると考えられる。
3)検査と診断
APTTが著しく延長するがプロトロンビン時間(PT)は正常であり、正常血漿との交差混合試験にてAPTTの延長が補正される。プレカリクレイン活性は因子欠乏血漿を用いて凝固活性として測定するか、または合成基質(S-2302)を用いてアミド水解活性として測定する。抗原量は、免疫学的(ELISAなど)に測定することもできる。ホモ接合体は、プレカリクレイン活性は1%以下であり、ヘテロ接合体は50%前後である。
4)その他のポイント・お役立ち情報
プレカリクレイン欠乏症の血漿は、カオリン、セライト、ガラスなどとの接触時間を長くすると(10分以上)、APTTが正常化するのが特徴である。特に、エラジン酸による場合に著しい。
引用文献
1) 金井正光監修,奥村伸生,戸塚実,矢冨裕編集,臨床検査法提要(規定第33版).金原出版,2010.
参考文献
1) 金井正光監修,奥村伸生,戸塚実,矢冨裕編集,臨床検査法提要(規定第33版).金原出版,2010.