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活性化プロテインC(APC)製剤 activated protein C (APC) concentrate
解説
活性化プロテインC(APC)は生理的な抗凝固物質であり、抗凝固機能としては活性化凝固第V因子および凝固第VIII因子の阻害作用(図)があり、またplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)やthrombin activatable fibrinolysis inhibitor(TAFI)などの線溶抑制因子を抑制する作用をも有する。また、炎症性サイトカインの産生を抑制するなど、抗炎症作用を有することも知られている。APCはトロンビンと結合したトロンボモジュリン(TM)により、前駆体であるプロテインC(PC)から転換されるが、敗血症などではTMの発現が低下しているため、充分なAPCの産生が行われない。このため、敗血症の治療薬としてもAPCは期待されていた。
海外ではリコンビナントAPC(rhAPC)が、PROWESS trial1)の成功により重症敗血症に使用されていたが、PROWESS-Shock trial2)などの失敗により、現在rhAPCは販売されていない。rhAPCは敗血症播種性血管内凝固症候群(DIC)には有効な可能性が高く、敗血症臨床試験での失敗の原因は、多くの軽症敗血症に使われたため、有意な治療効果を示せなかったと考えられている。日本では血漿由来APCが、アナクトCの商品名で帝人ファーマ社より販売され、先天性PC欠乏症における急性肺塞栓症を含めた静脈血栓塞栓症(VTE)に使用されているが、DICに対する適応はない。半減期は極めて短いため、点滴により静脈内投与される。副作用は出血傾向である。アナクトCは高額なため、heterozygoteのPC欠乏症VTEには使用されないことが多いが、homozygoteのPC欠乏症におけるVTEあるいは電撃性紫斑には有用な薬剤である。
図表
引用文献
1) Bernard GR, Vincent JL, Laterre PF, LaRosa SP, Dhainaut JF, Lopez-Rodriguez A, Steingrub JS, Garber GE, Helterbrand JD, Ely EW, Fisher CJ; Recombinant human protein C Worldwide Evaluation in Severe Sepsis (PROWESS) study group: Efficacy and safety of recombinant human activated protein C for severe sepsis. N Engl J Med 344: 699-709, 2001.
2) Ranieri VM, Thompson BT, Barie PS, Dhainaut JF, Douglas IS, Finfer S, Gårdlund B, Marshall JC, Rhodes A, Artigas A, Payen D, Tenhunen J, Al-Khalidi HR, Thompson V, Janes J, Macias WL, Vangerow B, Williams MD; PROWESS-SHOCK Study Group: Drotrecogin alfa (activated) in adults with septic shock. N Engl J Med 366: 2055-2064, 2012.
参考文献
1) 山本晃土:Protein Cの基礎と臨床,一瀬白帝編著,図説・血栓・止血・血管学血栓症制圧のために.中外医学社,449-454.