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  • 凝固第XI因子 coagulation factor XI

    2015/02/17 作成

    解説

    【分子量,半減期,血中濃度】
     分子量は16万、半減期は30-74時間、血中には4μg/mlの濃度で存在する。


    【構造と機能】

     凝固第XI因子(factor XI,FXI)は血液凝固因子の一種でセリンプロテアーゼの前駆体である.ヒトFXIは同一構造のサブユニットが2つ結合した独特の構造(ホモダイマー構造)を持ち,この構造はヒトFXIが凝固反応に寄与するために必須である.FXIを活性化する凝固因子は、トロンビン、活性化凝固第XII因子(FXIIa)および活性化FXI(FXIa)自身であり,このFXIを介した反応は血液凝固反応維持機構に重要な役割を果たすと考えられており、その欠乏・異常症で異常出血する場合がある.


    【ノックアウトマウスの表現形】

     尾切断後の出血時間は野生型とノックアウトマウスに明確な差はないが、塩化鉄障害血栓モデルでは野生型が完全閉塞したにもかかわらず、ノックアウトマウスでは血栓形成に抵抗性を示した。すなわち、血栓モデルにより差はあるが、適切なものを使用すればノックアウトマウスで血栓形成が抑制された。


    【病態との関わり】

     FXIは肝臓で合成されるため、肝硬変などの重症肝疾患で減少する。また先天的にFXI産生に障害がある場合、後天的に抗FXI抗体が産生された場合も低下する。止血検査では活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に含まれる凝固因子であり、FXI欠乏家系ではAPTTは著しく延長する。このような先天的欠乏症に関する研究は白人系ユダヤ人で比較的多く発見されるが本邦では約40例程度と稀である。凝固第XII因子(FXII)欠乏とは異なりFXI欠乏では出血傾向(口腔内出血、外傷や外科的処置後の出血などが報告)がみられる。


    【その他のポイント・お役立ち情報】

     近年、ポリリン酸がFXIIやFXIが属する接触因子系を活性化することが明らかにされ、血液凝固を開始する系が組織因子・凝固第VII因子系のみでないことが明らかにされた。炎症反応や様々な生理的刺激に関与する可能性があり、今後の研究の進歩に期待できる。

    参考文献

    1) 長江千愛,瀧正志:その他の先天性凝固因子欠損症の診断と治療,日本血栓止血学会編,血栓止血の臨床 -研修医のために.2011,84-87.
    2) 岸本磨由子,松下正:第XI因子,内科 111:1126,2013.
    3) 中冨靖,中垣智弘:内因系血液凝固研究の現状 -XII因子、XI因子および高分子キニノーゲンの欠損マウスについて-,血栓止血誌 20:323-28,2009.
    4) 宮田敏行,坂野史郎:血栓症と炎症におけるポリリン酸の役割,高久史磨他編集,Annual Review血液2014.東京,中外医学社,2014,216-223.