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  • プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2) prothrombin fragment 1+2(F1+2)

    2025/06/03 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    1) 基準値:
    69-229 pmol/L


    2)
    測定法・測定原理:
    内因系または外因系が活性化されて凝固反応が進み、共通系反応において活性化第X因子(FXa)が生じると、FXaによりプロトロンビン(FII)が活性化型のトロンビン(FIIa)へと変換される。このとき、プロトロンビンフラグメント1+2 (F1+2)と呼ばれるペプチドが遊離してトロンビンが生成される。凝固の中心的役割を示すトロンビンの生体内における活性の直接測定は不可能であるため、F1+2を測定することで間接的にトロンビンの産生量を把握可能と考えられている。サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を原理とすることが多く、マイクロプレートに固相化した抗F1+2抗体に検体中のF1+2が結合し、さらにこの複合体に標識抗F1+2抗体が結合し、標識酵素の酵素活性を発色などで定量化することで測定される。


    3)
    異常値を示す病態とそのメカニズム:
    F1+2の出現は間接的なトロンビン産生を意味し,活動性の凝固分子マーカーである。F1+2の血中半減期は約90分、同様にトロンビン活性化の指標であるトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)の血中半減期は数分~十数分と異なるため、両者のデータが乖離する場合があるが、播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation; DIC)や血栓症ではともに上昇する。抗凝固療法中のモニタリングにも有用で、ワルファリンヘパリンの効果判定にはF1+2が低値であることを確認する場合もある。


    4)
    異常値に遭遇した際の対応:
    異常高値であれば血栓傾向を示し、その病態に応じた抗凝固あるいは基礎疾患の治療が必要となる。


    5)
    その他のポイント・お役立ち情報:
    欧米での測定例が多い。ELISAキットとしてエンザイグノストF1+2(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)が市販されている。

    参考文献

    1. 新井盛大:プロトロンビンフラグメント12,金井正光監修,奥村伸生,戸塚実,矢冨裕編集,臨床検査法提要 改訂第33版.387
    2. プロトロンビンフラグメントF1+2キット エンザイグノストⓇ F1 2 monoclonal 添付文書 2013 9 月改訂(第 3 版)
    3. Wiedermann CJ. Clinical review: molecular mechanisms underlying the role of antithrombin in sepsis. Crit Care. 2006 Feb;10(1):209.
    4. Chandler WL, Velan T. Estimating the rate of thrombin and fibrin generation in vivo during cardiopulmonary bypass. Blood. 2003 Jun 1;101(11):4355-62.
    5. Koyama K, Madoiwa S, Nunomiya S, Koinuma T, Wada M, Sakata A, Ohmori T, Mimuro J, Sakata Y. Combination of thrombin-antithrombin complex, plasminogen activator inhibitor-1, and protein C activity for early identification of severe coagulopathy in initial phase of sepsis: a prospective observational study. Crit Care. 2014 Jan 13;18(1):R13.