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  • 希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT) dilute Russel’s viper venom time(dRVVT)

    2025/04/21 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    1) 基準値:方法・条件により異なる


    2) 測定法・測定原理:
    ラッセル蛇毒(Russel’s viper venom; RVV)は直接血漿中第X因子(FX)を活性化する能力がある.ラッセル蛇毒時間(RVVT)はFX以降の凝固反応を検出するために開発され、RVVTはその名前が凝固時間を意味するが、最近は生成した活性化FX(FXa)を合成発色基質で定量することが一般的で、合成基質S-2222が用いられる。なお、ループスアンチコアグラント(LA)検出の感度を上げるためにリン脂質(PL)濃度を希釈した希釈RVVT(dRVVT)で測定する。最近この検査結果にDOACの使用が明確に影響することが報告された。


    3) 異常値を示す病態とそのメカニズム:
    LA検出のスクリーニングとして優れるとともに、抗FXa活性を持つDOACのリバロキサバン投与時に顕著で、50 ng/mlから影響がみられ、200 ng/mlではdRVVTのLA1(低リン脂質濃度)/LA2(高リン脂質濃度)比が1.4を超えることが報告されている。

    RVVTの延長は、リン脂質が介在するX因子の直接活性化と共通経路(第X因子からプロトロンビン活性化)を評価する試験であり、LAの存在や同部位に作用する各種抗凝固薬による治療などで認める。


    4) 異常値に遭遇した際の対応:
    LAのスクリーニングとして異常値(T1/T2比が1.3など提示の測定キットあるいは会社の基準値を超える)の場合は過剰のリン脂質で中和されるかを確認する検査にすすむ。なお抗カルジオリピン抗体や抗β2グリコプロテインI抗体が未測定の場合は追加検査する。凝固因子の欠損や活性低下が異常値の原因として考えられる場合は、因子活性測定を実施する必要がある。また、ヘパリンDOACなどの抗凝固薬の使用により、偽陽性を示す可能性がある。中でも、抗Xa活性を持つDOACの中でアピキサバンはPTや活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の通常の止血スクリーニング検査では異常を検出できないため留意しなければならない。なお市販の抗Xa活性キット(STA Liquid anti-Xa assay, StagoとCoamatic Heparin reagent, Chromogenix)では200ng/ml以下の時点でも異常を検出した。なお、リバロキサバンとアピキサバンはダビガトランと異なり、その除去に透析は有効でない。止血には新鮮凍結血漿や凝固第IX因子複合体(保険適応ではない)の投与が必要になる場合がある。


    5) その他、お役立ち情報:
    抗リン脂質抗体症候群の診断に関しては日本血栓止血学会SSCの動向を注視していただきたい。方法やDOACの影響の詳細は文献にある。

     

    参考文献

    1) 新井盛大:第X因子の合成基質測定法,金井正光監修,奥村伸生,戸塚実,矢冨裕編集,臨床検査法提要 改訂第33版.363-364.
    2) Hillarp A, Gustafsson KM, Faxalv L, Strandberg K, Baghaei F, Blixter IF, Berndtsson M, Lindahl TL: Effects of oral, direct factor Xa inhibitor apixaban on routine coagulation assay and anti-factor Xa assays. J Thromb Hemostas in press (ePub online), 2014.
    3) 家子正裕,吉田美香,内藤澄悦:抗リン脂質抗体症候群と臨床検査,臨床病理 58(4):343-351,2010.