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  • セリンプロテアーゼ serin protease

    2015/02/17 作成

    解説

     セリンプロテアーゼとは、活性中心にセリン残基をもつプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)のことであり、多くはその触媒残基としてセリン、ヒスチジン、アスパラギン酸の3残基を有している。セリンプロテアーゼによる基質タンパク質の分解は、活性中心のセリン残基中の酸素原子によるペプチド結合を形成するカルボニル炭素への求核攻撃から始まり、最終的にそのペプチド結合を切断する。血液凝固系、凝固制御系および線溶系は、凝固第VIII(a)因子や凝固第V(a)因子のような凝固補酵素タンパク質、トロンビンがプロテインCを活性化する際のコファクターとして機能するトロンボモジュリン血管内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)、活性化プロテインCが活性型凝固補酵素タンパク質である第VIIIa因子や第Va因子を分解する際のコファクターとして機能するプロテインSなどを除けば、いずれもセリンプロテアーゼ前駆体の、活性型セリンプロテアーゼによる逐次的な活性化反応からなり、カスケード反応とも呼ばれる。活性型セリンプロテアーゼによる前駆体型セリンプロテアーゼの活性化は、そのほとんどが一本鎖タンパク質の限定分解による2本鎖への変換であり、それにより生成した高分子量鎖(heavy chain)と低分子量鎖(light chain)がセリンプロテアーゼ活性を示すためのに重要な立体構造を形作るものと考えられる。セリンプロテアーゼは、セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)により阻害されるが、その際、セルピンはセリンプロテアーゼに対して反応部位と呼ばれる部分を差出し、それがセリンプロテアーゼにより切断されると、セリンプロテアーゼの活性中心であるセリン残基とセルピン上のP1残基(反応部位のN末端側アミノ酸)との間でアシル結合が形成され、セリンプロテアーゼは失活するが、同時にセルピンの活性も失われる。このことからセルピンは自殺基質とも呼ばれる。一般的に、凝固系に関わるセリンプロテアーゼ前駆体の欠損症は、出血傾向を示し、その代表的なものには血液凝固第IX因子の欠乏に起因する血友病Bがある。それに対して、凝固制御系および線溶系に関わるセリンプロテアーゼの欠損症は一般的に血栓傾向を示し、その代表的なものにプロテインC欠乏症やプラスミノゲン欠乏症がある。

    図表

    • 血液凝固系、凝固制御系及び線溶系の概略図
       HMK: 高分子キニノゲン, TM: トロンボモジュリン, EPCR: 内皮細胞プロテインC受容体, t-PA: 組織プラスノゲンアクチベータ