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ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA) urokinase-type plasminogen activator (uPA)
解説
【分子量、血中濃度】
ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)は411アミノ酸残基からなる分子量約55kDaの一本鎖糖タンパク質である。血中濃度は0.3-1.1ng/mLとの報告がある。この量は組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)の血中濃度の1/5-1/10である。
【構造と機能】
1.uPAの構造はN末端からEGF領域、クリングル領域、活性領域で構成される。uPAは一本鎖非活性型のsingle-chain uPA(scuPA)として合成され、プラスミンや血漿カリクレインによりLys158-Ile159が切断され、二本鎖活性型高分子uPA(two-chain-uPA; tcuPA)となる。さらに、プラスミンなどによってLys135-Lys136とArg156-Phe157が切断されると、分子量31.5kDaの低分子uPA となる。また、Asn302にN型糖鎖が結合している。
2.uPAはプラスミノゲンのArg561-Val562を限定分解し、プラスミンへと変換・活性化させるセリンプロテアーゼである。tcuPAはtA のようなフィブリンに対する親和性を持たない。しかし、scuPAはtPAより弱いもののフィブリン親和性を有し、フィブリン上でプラスミンによりtcuPA となり、その周囲のプラスミノゲンを活性化することによりフィブリン上に限局した線溶活性を惹起しうる。
3.腫瘍細胞や炎症性細胞を含む多くの細胞にはuPAに対する特異的な受容体(uPAR)が存在する。uPAR はそのD2/D3領域にuPAのN末端領域(ATF)が結合すると周囲のインテグリンとの相互作用が誘導され、細胞機能を調節する。
4.uPARにより細胞表面に局在化して活性化されたuPA/プラスミン系は、細胞の遊走、浸潤、増殖、分化などの細胞機能の制御、細胞外基質の分解、各種プロテアーゼの活性化を介した組織の修復、リモデリング、血管新生、癌の浸潤、転移など様々な組織、細胞レベルでの機能に関与している。
【ノック・アウトマウスの表現形】
1.uPAKOは妊娠・出産、成長、健康状態ともに正常で、特に目立った特徴はない。
2.uPAKOは年齢とともに腎臓や肝臓にしばしば軽度のフィブリン沈着が観察された。血栓誘発モデルに対する線溶活性の低下はtPAKOに比べて軽度であった。
3.uPAKOの肝障害モデルにおける肝再生過程の解析では肝細胞増殖因子(HGF)活性化やマクロファージの誘導にuPAの重要性が示唆された。また、癌の増殖、浸潤・転移や血管の内膜肥厚、動脈硬化、細菌感染などの病態モデルでの結果からそのuPAの各組織における重要性が示唆された。
【病態】
1.uPAは急性心筋梗塞などの血栓症に対して血栓溶解薬として使用されてきた。uPA製剤はヒト尿中より精製されたtcuPAや樹立化細胞より精製されたscuPA(Pro-UK)が用いられた。tcuPAはtPAに比べフィブリン親和性が低いため血栓溶解効率が低いとされている。
2.肺癌や冠動脈再閉塞に伴い、uPAの血中濃度が上昇することが報告されている。
参考文献
1) 小嶋聡一:uPAの基礎と臨床,一瀬白帝編著,血栓・止血・血管学―血栓症制圧のためにー.中外医学社,2005,555-566.
2) 岡田清孝,松尾理:線溶系因子ノックアウトマウスと細胞性線溶,坂田洋一,小澤敬也編集,別冊・医学の歩み血液疾患―state of arts.医歯薬出版,2005,343-348.