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単純性紫斑・老人性紫斑 purpura simplex / senile purpura
解説
1)単純性紫斑
【病態・病因】
単純性紫斑病は日常診療で多くみられるが、原因と機序は不明である。
【疫学】
この疾患は女性に発症することが多い。外傷などの機械的刺激がないのに、四肢、特に下腿に点状出血や紫斑が出現する。基礎疾患やその他の出血異常はない。紫斑ができやすい人が家族にいる場合もある。重篤な出血は起こらない。
【検査と診断】
血小板数および血小板機能,凝固・線溶に関する検査は正常である。
【治療の実際】
通常治療は必要ない。多くの場合、紫斑は2-4週間程度で自然に消失する。予後は良好であるため、この病態が深刻なものではないことを患者に伝えて、不安を取り除くことが大切である。
【その他のポイント・お役立ち情報】
頭痛、生理痛などのためNSAIDsを服用している場合には、血小板機能低下による影響を考える。ステロイド長期服用者にも同様の紫斑が出現することがある。
2)老人性紫斑
【病態・病因】
老人性紫斑はsolar purpuraとも呼ばれる。加齢や長期の日光暴露による結合組織の損傷が真皮に生じ、血管の脆弱性を亢進させて斑状出血を来すものと考えられている。高齢者では、生理的に皮膚が薄く、皮下脂肪やコラーゲンが減少する。日常生活のわずかな外力によって、毛細血管が障害を受け、出血する。特に、手および前腕伸側面に限局して、濃紫色の斑状出血が持続性に生じるのが特徴である。
【疫学】
65歳以上の入院患者では約5%に老人性紫斑が認められ、年齢とともに増加する。90歳以上の男性では、30%に認められたという報告がある。
【検査と診断】
血小板数および血小板機能,凝固・線溶に関する検査は正常である。
【治療の実際】
一般に治療の必要はない。この疾患による深刻な影響もないため、患者の不安を取り除くことが大切である。
【その他のポイント・お役立ち情報】
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、骨髄異形成症候群、急性白血病、多発性骨髄腫、SLE、肝硬変などの鑑別が必要である。高齢者であるため、癌や大動脈瘤などの合併による慢性播種性血管内凝固症候群(「大動脈瘤とDIC」の項参照)、後天性血友病にも注意を払う必要がある。
参考文献
1) 間宮繁夫:単純性紫斑,別冊日本臨牀 血液症候群(第2版)II.日本臨牀社,2013,488-489.
2) Rodgers GM, Rees MM: Bleeding disorders caused by vascular abnormalities.Greer JP, Arber DA, Glader B, List AF, Means RT Jr., Paraskevas F, Rodgers GM, and Foerster J, Wintrobe’s Clinical Hematology, 13th ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2013, 1106-1121.