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  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP) primary immune thrombocytopenia / idiopathic thrombocytopenic purpura

    2015/02/17 作成

    解説

     特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)は、血小板減少が原因で出血傾向をきたす疾患である。


    1)病態・病因

     患者体内(主として脾臓)で抗血小板自己抗体が産生され、抗体が患者血小板に結合し、血小板が脾臓や肝臓などの網内系で貪食されるために血小板減少をきたす疾患である。さらに抗体は骨髄の巨核球にも結合し、血小板産生も低下させる。


    2)疫学

     わが国における患者数は約2万人である1)。男女比は約1:4で女性に多い。ITPには急性型と慢性型の2つのタイプがあり、急性型は小児に多く、慢性型は成人に多い。最近の調査では慢性型の年齢分布のピークは男女とも高齢者(65~85歳)へ移行している。


    3)検査と診断

     基本的には除外診断で、血小板減少をきたす他の疾患を除外することで診断される。そのため血液検査(血算および白血球分類)やHIV検査などを行う。血小板抗体を測定するとされているPAIgG検査は、ITP以外の他の疾患においても陽性を示すことが多いため診断確定のための検査としては使えない。骨髄異形成症候群など他の疾患が否定できない場合は骨髄検査等の特殊検査を追加する。その他、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無も検査しておく。
     ITPを積極的に診断する検査法も開発されてきている。

    a)流血中の幼若な血小板比率を測定する網状血小板測定
     ITPでは高値を示すが再生不良性貧血など血小板産生低下疾患では低値。(参照:「網状血小板比率(RP%)・幼若血小板比率(IPF%)」
    b)血中のトロンボポエチンの測定
     ITPでは基準値~軽度上昇だが再生不良性貧血など血小板産生低下疾患では著明な高値。
    c)抗血小板自己抗体(抗GPIIb/IIIa抗体)測定
     血小板表面の糖タンパク(GPIIb/IIIa)に結合する抗体の有無を検査する。
     現在のところいずれの検査法も一般の施設では測定できず、ITPを研究している施設に依頼する必要がある。



    4)治療の実際
    2)
    ・血小板数が3万/μl以上あり、出血傾向を認めない症例は無治療で経過観察する。・血小板数が3万/μl未満であり、かつ出血傾向を認める症例を治療対象とする。

    ・治療対象例でヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合は除菌治療を行う。
    ・感染を認めない症例、除菌療法を行っても血小板数・出血傾向が改善しない症例に対しては第一選択として副腎皮質ホルモン剤の経口投与を行う。投与量はプレドニゾロン換算で0.5~1.0mg/kg/日とし2~4週間投与後減量し、5~10mg/日の維持量にて経過観察する。

    ・副腎皮質ホルモン無効例に対しては摘脾療法を考慮する。脾臓は抗血小板抗体の産生臓器であるとともに感作血小板の破壊臓器でもある。摘脾により約60%の症例で治癒が得られる。

    ・近年ではトロンボポエチンレセプターに結合し、血小板産生を亢進させる薬剤(ロミプロスチムやエルトロンボパグ)も保険で認可されている。多くの症例で有効率は高いが中止すると血小板数はもとの低値に戻ることが多い。

    引用文献

    1) 倉田義之:臨床個人調査票(平成23年度)集計による特発性血小板減少性紫斑病の全国疫学調査及び平成23~25年度の研究のまとめ,厚生労働省難治性疾患克服研究事業,血液凝固異常症に関する調査研究,平成25年度総括・分担研究報告書.2014,32-45.
    2) 藤村欣吾,宮川義隆,倉田義之,桑名正隆,冨山佳昭,村田満:成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイドライン 2012版,臨床血液53:433-442,2012.