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  • ADAMTS13活性測定とインヒビター

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     ADAMTS13活性の著減は過剰な血小板凝集を引き起こし、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の原因となる。TTPはADAMTS13活性著減(正常血漿の10%未満)を特徴とするため、溶血性尿毒症症候群(HUS)(参照:典型(志賀毒素)HUS)や播種性血管内凝固症候群(DIC)など類似疾患との鑑別に活性測定は重要である。基準値は50-150%。


    【測定法の種類】
     クエン酸血漿のフォン・ヴィレブランド因子(VWF)切断酵素活性を測定する。基質としてVWF全長を用いる方法と、73残基ペプチドVWF73(およびその類似物質)を用いる方法に大別される。前者では、切断反応を定量化する手法として、SDS-PAGEによる切断産物の検出、マルチマー解析による低分子量化の観察、残存コラーゲン結合能の測定、部位特異的抗体によるサンドイッチELISA、残存リストセチン血小板凝集能の測定などがある。フローチャンバーで蛍光顕微鏡観察する方法もある。VWF73を用いる測定法にもバリエーションがあるが、広く普及しているのはFRET法とact-ELISA法である。


    【FRET法】

     ADAMTS13による切断部位(Tyr-Met)を挟むように蛍光基と消光基で修飾された合成ペプチドFRETS-VWF73を基質として用いる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)原理を利用しており、切断活性に比例して蛍光強度が上昇する。簡便性と迅速性が特徴であり、検出下限は3%。


    【act-ELISA法】

     ELISAプレートに固相化したVWF73を基質として用いる。切断で新たに生じる末端構造を認識する抗体で切断産物の生成量を測定する。感度が高く、検出下限は0.5%。


    【インヒビター】

     ADAMTS13に結合して活性を阻害する自己抗体。後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP)患者の多くはインヒビターを保有しており、そのエピトープはADAMTS13のSドメインに多い。インヒビターが生じる機序は不明である。ADAMTS13活性が著減し、インヒビターが陰性であれば、先天性TTPの可能性が高い。


    【インヒビターの測定】

     凝固第VIII因子や凝固第IX因子に対するインヒビター力価測定に準じ、Bethesda法で測定する。被検血漿に等量(力価によっては適宜調整)の正常血漿を混和して静置後、ADAMTS13活性を測定する。緩衝液と正常血漿を等量混和した対照試料の活性と比較して50%低下する力価を1 Bethesda Unit (BU)/mLと定義し、1 BU/mL以上を陽性、0.5 BU/mL未満を陰性と判定する。0.5-1 BU/mLの場合は判断が難しい。

    参考文献

    1) Kokame K, Matsumoto M, Fujimura Y, Miyata T: VWF73, a region from D1596 to R1668 of von Willebrand factor, provides a minimal substrate for ADAMTS-13. Blood 103: 607612, 2004.
    2) Kokame K, Nobe Y, Kokubo Y, Okayama A, Miyata T: FRETS-VWF73, a first fluorogenic substrate for ADAMTS13 assay. Br J Haematol 129: 93100, 2005.
    3) Kato S, Matsumoto M, Matsuyama T, Isonishi A, Hiura H, Fujimura Y: Novel monoclonal antibody-based enzyme immunoassay for determining plasma levels of ADAMTS13 activity. Transfusion 46: 14441452, 2006.