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  • 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP) acquired thrombotic thrombocytopenic purport

    2015/02/17 作成

    解説

    【病因】
     全身の微小血管に血小板血栓が形成されることで発症する。その原因としてフォン・ヴィレブランド因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13活性が低下することが報告されている(血栓性微小血管症;TMA)。後天性TTPの場合は、ADAMTS13に対する自己抗体によって同活性が低下する。自己抗体には、活性阻害抗体(インヒビター)と非阻害抗体があり、非阻害抗体は血液中からのクリアランスを増加させることでADAMTS13活性を著減させると考えられている(参照:「ADAMTS13」の項参照)。
    【疫学】
     海外からの報告では100万人に4人/年発症とされている。20-40歳代の女性に多いとされていたが、日本国内のデータベースには乳児から80歳代の高齢者まで登録されており、40歳代と60歳前後に発症ピークが認められる。国内では40歳代は女性が多いが、60歳以降は逆に男性優位である。


    【検査と診断】

     歴史的には、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、発熱、精神神経症状の古典的5徴候で診断されていたが、5徴候すべて揃うのは病期が進行してからであり、前2者のみでも同様の病態であることが明らかとなった。そのため、原因不明の血小板減少と溶血性貧血を認めた場合、TTPを疑いADAMTS13活性を測定し、10%未満であればTTPと診断する。ADAMTS13自己抗体が陽性であれば後天性血栓性血小板減少性紫斑病 (後天性TTP) と診断する。なお、ADAMTS13活性が著減しない場合でも、古典的5 徴候などの臨床症状でTTPと診断されることがあったが、病態が明らかでは無いため、このようなADAMTS13非著減例はTTP類縁疾患と考えられるようになりつつある。


    【治療の実際】

     後天性TTPで唯一効果が証明されている治療は、血漿交換である。循環血液量の1-1.5倍の新鮮凍結血漿(FFP)を用いて、血小板数が正常になるまで連日実施することが理想であるが、日本国内では「一連につき週3回を限度として、3月間に限って算定する。」との保険適用があり十分に実施することができない場合がある。多くの症例で、血漿交換にステロイドパルス療法などが併用されることが多い。血漿交換が無効な場合に、保険適用になっていないがシクロフォスファミド、ビンクリスチン、サイクロスポリンなどが経験的に使用されてきた。最近では、難治例・再発例に対するリツキシマブの効果が注目されているが、保険適用外である。


    【その他のポイント】

     ADAMTS13インヒビター力価が2 bethesda単位/ml以上の高値の症例は、予後が不良であることが報告されており、血漿交換に抵抗性である可能性がある。

    参考文献

    1) Amorosi EL, Ultmann JE: Thrombotic thrombocytopenic purpura:report of 16 cases and review of the literature. Medicine 45: 139-159, 1966.
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    5) Tsai HM, Lian EC: Antibodies to von Willebrand factor-cleaving protease in acute thrombotic thrombocytopenic purpura. N Engl J Med 339: 15851594, 1998.