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Gas6 (growth arrest-specific gene 6 product)
解説
Growth arrest-specific gene 6 product(Gas6)の遺伝子はNIH3T3細胞の増殖停止時に特異的に発現される遺伝子として見いだされたビタミンK依存性タンパク質である.
【分子量】
【血中濃度】
血中濃度はnM以下である.
【構造と機能】
プロテインSと相同性が高く,アミノ酸で4割に及ぶ.N末端からγ-Glaドメイン,EGF様ドメイン,sex hormone-binding globulin(SHBG)様ドメインを持つ(図2).GlaドメインはGas6の活性を調節していると考えられている.Gas6中にトロンビンで切断される部位は存在しない.生体内の役割として細胞死抑制,アポトーシスを起こした細胞のクリアランス,細胞増殖促進,破骨細胞機能調節等がある.血栓止血領域では血栓形成に抑制的に働くことが報告されている.Gas6のこれら機能はTyro3/Axl/Mer(TAM)レセプター(図1)を介するシグナル伝達によると考えられている.Gas6のmRNAはヒトの肺,腸,骨髄,内皮細胞等に発現している.血小板にも発現していることが確認されており,血小板活性化とともに放出が起こる.
【ノック・アウトマウスの表現形】
出生率はメンデル則に従い,致死などは無く,正常に成長する.行動や発育状態,繁殖力にも異常を認めない.通常の状態では出血傾向や血栓傾向は認めない.尾切断後の止血時間にも有意差は無かった.しかしながら,下大静脈結紮モデルでは形成される血栓は85%縮小しており頸動脈の血管表面剥離後の血栓形成でも60%縮小が確認された.コラーゲン・エピネフリン静脈投与後の致死率は80%から20%に低減していた.凝集計により血小板機能を評価するとGas6ノックアウトマウスの血小板は野生型マウスで十分な凝集を起こす濃度のアゴニストでは凝集を認めなかった.一方,高濃度アゴニスト刺激では野生型マウスと同様の凝集を認めた.この変化はPMA,A23187,トロンビンでは認めず,野生型と同等の血小板凝集が確認された.しかしながら,凝集した血小板は粗で脱顆粒も不十分であった.
【病態との関わり】
全身性エリテマトーデスがマクロファージによるアポトーシス細胞のクリアランスを原因とすることからSLEとの関与や血管平滑筋細胞のアポトーシスを介した血管石灰化との関わりを持つ可能性がある.
図表
参考文献
1) Gas6の欠損マウス,血栓止血誌 12(6):514-521,2001.
2) 血管石灰化の分子機構とその制御,オステオポローシスジャパン 16(2):137-144,2008.
3) 血管石灰化の分子機序,血管医学 9(1):51-56,2008.
4) プロテインS/TAMレセプターを介したアポトーシス細胞のクリアランス,血栓止血誌 23(6):585-587,2012.
5) プロテインC/プロテインSの基礎,血栓止血誌 25(1):40-47,2014.