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GPVI glycoprotein VI
解説
【概要】
GP(glycoprotein) VIはコラーゲン受容体であり、高ずり応力下ではコラーゲンに結合したフォン・ヴィレブランド因子(VWF)とGPIb/IX/V complexの接着後、最初に血管内皮下のコラーゲンに結合することにより活性化シグナルが惹起され、インテグリンα2β1やインテグリンαIIb/β3の活性化とともに血小板活性化物質(トロンボキサンA2;TXA2,アデノシン二リン酸;ADPなど)を放出させる。近年、ラミニンもGPVIに結合することが報告されている。
【構造と機能】
血小板、巨核球に限定的に発現しているGPVIは、イムノグロブリンスーパーファミリーに属し、Fc receptor (FcR)γ-chain分子のホモダイマーと複合体を形成する61/65kDa(非還元型、還元型)の血小板糖タンパク受容体である。血小板あたり約3,500コピーのGPVIが発現しており、コラーゲンによりGPVIがクラスタリングされるとFyn、LynがFcRγ-chainのimmunoreceptor tyrosine-based activation motif(ITAM; YXXL-(X)10-12YXXL)のチロシンをリン酸化する。Sykがこのリン酸化チロシンに結合し活性化されるとLAT、SLP-76、Val1/3をチロシンリン酸化、Tec/Btkも加わりphospholioase Cγ2(PLCγ2)が活性化される。PLCγ2はPIPをdiacylglyserol(DG)とinositol 1,4,5-triphosphate(IP3)に加水分解する。これらはそれぞれプロテインキナーゼC活性と細胞内ストアからのカルシウムの放出を惹起し血小板を活性化する(図)。
【ノック・アウトマウスの表現形、病態との関わり】
GPVI/FcRγ-chain ノックアウトマウスは、種々の in vivo血栓形成マウスモデルにて血栓生成が抑制されるものの、Tail-bleeding timeが軽度に延長するのみである。また、この血小板はコラーゲン惹起血小板凝集が欠如している.GPVI欠損患者においては、出血症状は一般的に軽度であるが、この患者の血小板もコラーゲン反応が欠損している。
【その他】
血小板の活性化に伴い血小板表面上のGPVIはタンパク質分解酵素であるADAM10により切断され、血中の可溶性GPVI濃度が上昇すると報告されている。可溶性GPVI測定は血栓症の診断マーカーとなり得ることを示唆しており、現在ELISA法にて測定可能である。
図表
参考文献
1) 井上克枝:血小板における接着分子の信号伝達系―免疫グロブリンスーパーファミリーとインテグリンを焦点に当てて-,日本血栓止血学会誌:Vol.17(1):12-19,2006.