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  • 抗血小板第4因子・ヘパリン複合体抗体(HIT抗体) anti-platelet factor 4/heparin antibodies (HIT antibodies)

    2024/06/05 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【基準値】

    ラテックス凝集比濁法(LIA) 1.0 U/mL以上で陽性
    化学発光免疫測定法(CLIA) 1.00 U/mL以上で陽性
    イムノクロマト法(ICA) 目視判定で赤いバンドを認めれば陽性

    血小板第4因子(PF4)/ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断を目的に測定される。感度が高いため陰性の場合はHITを除外できるが、偽陽性が多いため陽性でも確定診断とはならない。LIAとCLIAは抗体価で測定されるがLIAには定量性はなく、高値でも偽陽性の可能性があり、CLIAは定量性があるため高値ほどHITの可能性は高くなる。

    【測定法・測定原理】

    HIT抗体の存在を測定する免疫測定法と、血小板活性化能を測定する機能的測定法がある。保険収載され実臨床で用いられているのは前者で、後者は臨床研究で測定されている。免疫測定法はPF4/ヘパリン(もしくはスルホン化ポリビニル)複合体を標的としたLIA、CLIA、ICAがあり、国外では酵素結合免疫測定法(ELISA)も用いられる。機能的測定法は患者血清または血漿を健常人の血小板に添加し、そこにヘパリンを加えることで血小板が活性化するかどうかを測定するが、「洗浄血小板を用いる」、「HIT抗体に最適反応を示すドナーを選択する」、「弱陽性コントロールを含む」など、高い品質管理が要求される。

    【異常となる病態・疾患】

    HIT抗体が陽性となる病態・疾患はHITや抗PF4抗体疾患である。抗PF4抗体疾患は新しく提唱されている疾患群で、感染や外傷、新型コロナウイルスワクチン(特にアデノウイルスベクターワクチン)の他、アデノウイルス感染でもHIT抗体に類似した抗PF4抗体が産生され、HITに近い病態を呈することが報告されている。詳細はヘパリン起因性血小板減少症/抗PF4抗体疾患の項を参照していただきたい。

    HITを疑った際、LIA、CLIA、ICAいずれの検査を選択しても感度は同程度のため、除外診断能は変わりない。しかし、特異度は必ずしも高くないため、HIT抗体が陽性であれば機能的測定法で確認することが望ましい。HIT以外の抗PF4抗体疾患の診断にはELISAによる測定が必須となる。抗PF4抗体はLIAでは検出できず、CLIAで検出できる症例はわずかで、ICAはデータがない。ELISAによる検査は国内では実施できず、臨床研究でのみ測定されているため、抗PF4抗体疾患を疑った際は専門施設に相談することが望ましい。

    参考文献

    ・矢冨裕, 家子正裕, 他:ヘパリン起因性血小板減少症の診断・治療ガイドライン.血栓止血誌. 32: 737-782, 2021.
    ・Watson HS, Davidson DK, et al: Guidelines on the diagnosis and management of heparin-induced thrombocytopenia: second edition. Br J Haematol. 159: 528-540, 2012.
    ・Platton S, Bartlett A, et al: Evaluation of laboratory assays for anti-Platelet Factor 4 antibodies after ChAdOx1 nCOV-19 vaccination. J Thromb Haemost. 19: 2007-2013, 2021.