大分類
  • 凝固
  • 小分類
  • 機構
  • 血液凝固機序―内因系・外因系

    2015/02/17 作成

    解説

     血液凝固の引き金には二つの経路がある。内因系は血液の異物面との接触により凝固が始まる。必要な因子はすべて“内”(血中)にあるので内因系と呼ぶ。外因系は血液が血管外にでて組織液(組織因子)と混じると凝固反応が起こる。組織因子は血液の“外”にあるのでこの名前がある。凝固検査で、内因系のスクリーニング検査としては活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、外因系に対してはプロトロンビン時間(PT)が用いられる。内因系と外因系の区別は、凝固機序の理解や検査結果の解釈を助けるための人為的なもので、生体内では二つの系が独立しているのではなく、お互いに連携し活性化し合う。止血に重要なのは外因系である。

     多くの凝固因子(凝固第XI因子凝固第X因子、プロトロンビン)は、一旦活性化されると酵素として次の段階の因子を活性化し、反応は連鎖的に進む。活性化した凝固第XI因子はXIa (activated)と表現する。一方、凝固第V因子、凝固第VIII因子、組織因子は補助因子として活性化速度を早める。この際、複数の因子がリン脂質上(障害内皮細胞、活性化血小板)に結合して複合体を作り効率良く反応する。最初の刺激が小さくても各段階で増幅され爆発的に大量のトロンビンが生成される(図)。

     内因系は、血液の異物面との接触により、凝固第XII因子、プレカリクレイン、高分子キニノゲンが複雑に反応して凝固第XI因子を活性化(XIa)する。XIaは凝固第IX因子をIXaに活性化する。次いでIXaはリン脂質上で凝固第VIII因子凝固第X因子と複合体を作り凝固第X因子を活性化する。外因系では、組織因子と凝固第VII因子の複合体が凝固第IX因子および凝固第X因子を活性化する。二つの系により生成したXaは凝固第V因子、プロトロンビンとリン脂質上で複合体をつくりプロトロンビンをトロンビンに活性化する。トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに転換する。その後、フィブリンは凝固第XIII因子により架橋されて安定化フィブリンとなる。また生成したトロンビンはフードバックして凝固第XI因子、凝固第V因子、凝固第VIII因子を活性化(修飾)する作用も持つ(図の点線)。

    図表

    • 図 血液凝固機序(内因系・外因系)

    参考文献

    1) Saito, H: Normal hemostatic mechanisms. In Disorders of Hemostasis (Ratnoff OD, Forbes CD ed,)3rd edition. WB Saunders Comp, 1996.