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  • 抗リン脂質抗体症候群(APS) anti-phospholipid syndrome(APS)

    2022/01/24 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    病態・病因

     抗リン脂質抗体症候群(APS)は抗リン脂質抗体(aPL)が血中に証明され,動静脈血栓症や妊娠合併症を臨床症状とする患者群の総称である.APSに関連するaPLは,リン脂質-リン脂質結合タンパク複合体を認識する自己抗体であり,抗カルジオリピン抗体(aCL),抗β2-glycoprotein I抗体(aβ2GPI)およびループスアンチコアグラント(LA)などがある.臨床症状は,深部静脈血栓症が最も多く,次いで脳梗塞,血小板減少症,妊娠合併症などであり,急性心筋梗塞は比較的少ない.血栓症の機序として,aPLによる血液凝固制御機序(活性化プロテインC活性など)の阻害や血管内皮細胞・末梢血単球の活性化に伴う組織因子の発現誘導などが推定されている.


    疫学

     APS患者数は2~3万人と推定されている.患者年齢は10~80歳代まで広く分布し,男女比では圧倒的に女性に多い.明らかな基礎疾患や誘因がなく発症する原発性抗リン脂質抗体症候群(Primary APS)と,全身性エリテマトーデス(SLE)などの基礎疾患に合併して発症する続発性抗リン脂質抗体症候群(Secondary APS)に分類される.また,特殊型として劇症型APS(Catastrophic APS)がある.腎臓を含む3臓器以上の広範囲な血栓症で発症し,急激な経過をとり極めて予後不良である.


    検査と診断

     APS診断には,抗リン脂質抗体症候群分類基準(シドニー改変サッポロクライテリア)(表)が用いられる.臨床所見は動静脈血栓症や妊娠合併症に加えて,偏頭痛,網状皮斑や血小板減少症などのaPL関連症状も考慮される.このAPS分類基準は確定診断のためには極めて有用ではあるが,検査所見が12週間以上離れて2回以上検出されることが条件であるため治療開始基準としては不適である.一般的には,臨床所見に加えて,臨床所見が1度でも確認されたなら治療を考慮する.


    治療の実際

    APSの治療はワルファリンおよび抗血小板薬による血栓症の二次予防が中心である。ワルファリン療法ではPT-INR 2.0~3.0を目標に投与する.動脈血栓症の場合にはワルファリンに抗血小板薬を併用する場合もあり,抗血小板薬の単独または2剤併用を推奨する報告もある。臨床症状のないaPL陽性者は経過観察であるが、aPL陽性で妊娠中または手術直後の患者においてはヘパリンカルシウム(皮下注射)の予防投与が考慮される.

    図表

    • 表.APS分類基準  (Revised Sapporo Criteria in Sydney 2006)

    参考文献

    1) Miyakis S, Lockshin MD, Atsumi T, Branch DW, Brey RL, Cervera R, Derksen RH, DE Groot PG, Koike T, Meroni PL, Reber G, Shoenfeld Y, Tincani A, Vlachoyiannopoulos PG, Krilis SA: International consensus statement on an update of the classification criteria for definite antiphospholipid syndrome (APS). J Thromb Haemost 4: 295-306, 2006.
    2) 家子正裕:抗リン脂質抗体症候群(APS),朝倉栄策編,臨床に直結する血栓止血学.東京,中外医学社,2013,275-281.