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  • Osler病 Osler disease

    2015/08/20 作成

    解説

     Osler病は別名、遺伝性出血性毛細血管拡張(hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)やランデューオスラーウェーバー症候群(Rendu-Osler-Weber syndrome)など様々な呼び方が存在する。常染色体優性遺伝の先天性疾患で、粘膜、皮膚、中枢神経器官に毛細血管拡張性の微小血管腫を多数生じ、同部位からの繰り返す出血を特徴とする。

     最近の研究でHHTは3タイプに分類され、HHT1はエンドグリン遺伝子に、またHHT2はactivin receptor-like kinase type I (ALK-1) 遺伝子に異常を認め、いずれも血管形成時の血管内膜の形成に関与している。さらにHHT3はSMAD4の遺伝子異常が指摘されている。
     組織学的には小血管壁において内弾性板や平滑筋などに欠損が存在し、そのため血管は極めて脆弱となりさらに収縮できず出血しやすい。臨床的には、若年期に鼻出血、壮年期に皮膚毛細血管の拡張が始まることが多い。また鼻粘膜、口腔粘膜に特徴的な血管拡張病変が多く認められるが、手、顔面、口唇、舌や食道、胃、直腸など消化管にも多数存在している。なお、特徴的な血管拡張病変は点状、クモ状、斑状、小結節性など多彩かつ境界鮮明で紫斑とは違い透明プラスチック板などで圧迫すると消退するという特徴がある。
     一般的には出血症状は小児よりも大人に多く、特に消化管出血は50歳以上に多く認められる。消化管からの出血、血管病変の発見には内視鏡検査が非常に有効。時に呼吸器・腎泌尿器系から出血することもあり、合併症として肺、脳、肝臓等の臓器に動静脈瘻が存在しその診断は極めて重要。止血機能には異常はなく、スクリーニング検査(血小板数、活性化部分トロンビン時間(APTT)、プロトロンビン時間(PT))はいずれも正常。しかし、Rumpel-Leedeテストで軽度の異常を認める所見は非常に重要。時に様々な部位からの慢性出血が原因となる鉄欠乏性貧血を合併することがある。家族歴、皮膚粘膜の毛細血管拡張や反復する出血症状などから診断は比較的容易である。皮膚症状が少ない場合は診断困難であり、消化管に対して内視鏡検査や肝臓病変に対して血管造影が必要なことがある。
     Shovlinらが次のような診断基準を提唱している。1)自然に起こり繰り返す鼻出血、2)皮膚や粘膜に多発する毛細血管拡張(口唇、口腔、指、鼻が特徴的)、3)肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の動静脈瘻(動静脈奇形)、4)一親等以内にこの病気の患者がいる。以上の4項目のうち、3つ以上あると確診(definite)、2つで疑診(probable or suspected)、1つだけでは可能性は低い(unlikely)。
     重要な合併症として、高齢者では肺動静脈瘻を合併し低酸素血症を発症し、喀血や血胸も報告されている。また肝臓の動静脈瘻や血管腫のために肝硬変を合併し、時には脾腫大、脾動脈瘤や中枢神経系の血管奇形も認められる。経過は長く、致死的出血は少ない。なお、繰り返す出血や貧血に対し適切な処置を行えば比較的経過は良い。
     治療は、出血に対する対症療法が主。血管拡張部からの出血に対しては血管収縮薬、止血薬を含ませたガーゼなどで圧迫する。鼻出血に対しレーザー治療が有効なことがある。消化管出血に対して内視鏡によるレーザー凝固が有用と報告されている。

    参考文献

    1)Osler病:医学大辞典2009.
    2)難病情報センター、オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)(平成22年度)厚生労働省、HP、227 オスラー病