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  • トロンボテスト・ヘパプラスチンテスト thrombo test・hepaplastin test

    2015/08/12 作成

    解説

    1)基準値
     トロンボテスト(TT)の基準値、いわゆる健常者の値は70%以上であるが、臨床的にはワルファリン治療域として10-25%を用いる。ヘパプラスチンテスト(HPT)の基準値は70-130%である。

    2)測定原理・方法
     TT、HPTともに方法論的には外因系凝固スクリーニング検査プロトロンビン時間(PT)の原理を基にして作成された検査である。TTは試薬として牛脳由来組織因子に加え、牛バリウム吸着血漿を加えプロトロンビン、凝固第VII因子、凝固第X因子を人工的に除去した系で外因系凝固時間を測定することでこれらの凝固因子の複合的な活性を測定する系である。一方、HPTは試薬として用いる組織因子がウサギ脳由来である点がTTと異なり、そのためprotein induced by vitamin K absence or antagonist(PIVKA)の影響を受けない測定原理である。

    3)異常値を示す病態とそのメカニズム
     TTが異常値を示す病態はワルファリン投与時である。そのメカニズムは外因系に属するビタミンK依存因子中のプロトロンビン、凝固第VII因子、凝固第X因子活性のワルファリンによる低下およびPIVKAによる阻害を含めたこれら3種の総凝固活性の低下による外因系凝固時間の反映である。HPTはプロトロンビン、凝固第VII因子、凝固第X因子活性の総和をPIVKAの影響がない状況で測定する検査で、肝予備能(肝臓のタンパク合成能)低下とビタミンK不足状態を認める病態で異常値を示す。

    4)異常値に遭遇した際の対応
     TT延長で多いのはワルファリンの効きすぎであり、減量・中止および重症の場合など必要に応じビタミンK製剤や新鮮凍結血漿の使用が必要となる。 HPTはビタミンK不足あるいは肝硬変、肝不全などでTTと異なりPIVKAの影響を受けず本検査は異常を示すため、これに留意し診断を進める肝予備能のマーカーなどとして利用する。

    5)その他、お役立ち情報
     現在ワルファリンのモニタリングはPT-INRが主流であるが、試薬間差はPT-INRよりTT-INRで少ないことが最近報告された。また、最近報告された産科DIC(参照:産科領域のDIC)の診断基準にPTとともに、HPTが取り上げられている。 また本検査はヘパリン高用量(15,000単位)静注後8時間までは偽低値を示すため注意が必要である。一方、最近臨床的に汎用され始めた凝固第X因子阻害薬(Xa阻害薬),経口トロンビン阻害薬(direct oral anticoagulants; DOAC)検出目的で報告されているトロンビン時間もTTと略することがあり、本検査の略号が同一であるため混同しないよう注意が必要である。また、HPTは英語でnormotestと呼ばれることも多く、文献検索時に注意が必要である。

    参考文献

    1)朝倉英策:トロンボテスト(TT)、ヘパプラスチンテスト(HPT)、PIVKA-II.臨床に直結する血栓止血学(朝倉英策 編集)、44-45、中外医学社、2013
    2)小宮山豊:複合凝固因子の検査 スタンダード検査血液学(日本検査血液学会 編)、164-165、医歯薬出版、2014
    3)坂寄輔、内藤澄悦、吉田美香、熊野穣、加藤法喜、奥田昌宏、家子正裕:ワーファリン服用患者における国際標準化比(INR)の正確性と信頼性―プロトロンビン時間とトロンボテストの凝固因子感受性に関する特性の比較―.臨床病理 58:779‐85,2010.