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  • PAR-1阻害薬 PAR-1 antagonist

    2015/08/05 作成

    解説

     血小板表面上にはトロンビンに反応するプロテアーゼ活性型受容(PAR)-1が存在する。マウスのトロンビン受容体としてはPAR-4が主要であるが、ヒトではPAR-1の役割が主体である。PAR受容体ノックアウトマウスでは出血時間が延長しなかった。ヒトでも「PAR-1受容体は出血を増加させない抗血小板薬」と期待された。Vorapaxarと、日本のAtopaxarが第二相臨床試験に進んだ。小規模な第二相試験では、「PAR-1受容体は出血を増加させない抗血小板薬」という仮説は否定されなかった。そこで、Vorapaxarでは、急性冠症候群、血管病の二次予防の2つの大きな領域において第三相国際共同仮説検証試験が施行された。
     急性冠症候群の標準治療はアスピリン・クロピドグレルの抗血小板併用療法が確立している(参照:虚血性心疾患と抗血小板療法)。標準治療にVorapaxarまたはプラセボをランダムに追加した。すなわち、Vorapaxar群はアスピリン・クロピドグレル・Vorapaxarの三剤併用群となった。出血イベントを上回る抗血栓のメリットを期待できないとして試験は安全性の観点から中止された。血管病の二次予防では標準治療がアスピリンの場合が多い。この試験も脳血管疾患後の症例は中途にて安全性を上回る有効性を期待できないとして中止された。末梢血管疾患、冠動脈疾患の症例ではVorapaxarは最後まで継続されたが、メリットを得たのは冠動脈疾患の症例であった。既に確立された標準治療に追加する試験ではPAR-1阻害薬の特性を十分に示すことができなかった。米国での承認が各国に広がるか否か今後の注目課題である。