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  • 血栓性微小血管症(TMA) thrombotic microangiopathy(TMA)

    2022/04/02 更新
    2015/03/19 作成

    解説

    1.定義

    細血管障害性溶血性貧血、血小板減少、細血管内の微小血栓による臓器機能障害の3徴候からなる疾患群の総称。

     

    2.分類、病態、病因

    代表的2疾患は血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura; TTP)、溶血性尿毒症症候群(hemolyitic uremic syndrome; HUS)である。TTPはフォンウィルブランド因子(VWF)切断酵素ADAMTS-13の遺伝子異常、切断酵素に対する活性中和抗体などで酵素活性の著減(<10%)を特徴とし、血小板結合活性の高い超高分子量VWF多重体の分解不全により、全身の微小血管内で血小板主体の血栓が形成されて発症する。典型HUSは病原性大腸菌が産生する志賀毒素による内皮細胞障害(蛋白合成阻害)で、毒素のGb3受容体が腎臓の糸球体内皮細胞に高発現しているため腎障害主体になると考えられている。非典型HUSでは補体第二経路やその調節因子の遺伝子異常や自己抗体による補体の過剰活性化と内皮傷害が微小血管障害を引き起こすと考えられているが、腎障害主体の理由は明確ではない。二次性TMAとして、膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症など)、骨髄•臓器移植、悪性腫瘍、妊娠(HELLP症候群など)、薬剤(抗癌剤、免疫抑制剤など)などに関連したものなどが含まれ、様々な病因による微小血管の内皮細胞障害によりTMAを発症すると考えられている(表)。

     

    3.TMAの病理

    TTPHUSでは血栓の分布や質に違いがあり、病理学的にも区別しうると報告されている。TTPの血栓は血小板に富み、全身とくに脳、心臓、腎臓の細動脈や毛細血管に分布する。HUSでは腎臓に限局し小動脈、細動脈、毛細血管に血栓を認める。微小血栓に加えて糸球体病変、皮質壊死、尿細管病変を様々な程度に合併する。血栓の質は明確ではないが血小板とフィブリンからなると考えられている。微小血管血栓症として類似する播種性血管内凝固症候群(DIC)は種々の疾患を基礎に引き起こされる全身性の消費性凝固異常であり、全身、特に肺や腎臓の毛細血管にフィブリン主体の微小血栓が形成される。

     

    図表

    参考文献

    1. 松本雅則、TMAの分類と診断、血栓止血誌 2020;31:3-6.
    2. 山下 篤、TMAの病理、血栓止血誌 2014;25:682-688.
    3. 松本雅則、藤村吉博、和田英夫、他、臨床血液2017;58:271-281.