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  • ケモカイン chemokine

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     ケモカインとは細胞遊走活性を主機能とするサイトカインの一群で,生体における様々な細胞の組織内移動や局在を制御する。殊に白血球やリンパ球遊走活性を制御することから、炎症・免疫における役割について解析が進んでいる(1)。

    【構造と機能】

     ケモカインは8-14kDa程度の低分子タンパク質であり、典型的なケモカインのアミノ酸配列中には4つのシステイン残基がよく保存されている。これらはN末端側からそれぞれ1番目と3番目、2番目と4番目のシステイン残基同士でジスルフィド結合を形成することにより2次構造の形成に重要な役割を果たしている。システイン(Cys)配列の違いにより以下述べるようにCC、CXC、C、CX3Cの4種類に分類される(1-3)。


    CCケモカイン

     1次構造においてN末端側の2つのシステイン残基(C)が連続している。27種類がこれまでに同定されており、CCL(CC chemokine ligand)1-CCL 28まで存在する(表)。


    CXCケモカイン

     N末端側の2つのシステイン残基の間にその他のアミノ酸が1つ存在するという配列であるCXCモチーフを有する。CXCケモカインはさらにELR(Glu-Leu-Arg)モチーフを有するものと有しないものの2つに分類される。ELRモチーフを有するものは好中球を遊走させる活性を有し、血管新生作用を持つ。一方ELRモチーフを有しないものはリンパ球を主に遊走させ、血管新生に対して抑制的に働く(3)。


    Cケモカイン

     Cケモカインは他のグループと異なり、本来4つあるべきシステイン残基のうちN末端側から2及び4番目にあたる2つのシステイン残基のみしか有さない。


    CX3Cケモカイン

     N末端側の2つのシステイン残基の間にその他のアミノ酸が3つある。
     ケモカインはそれぞれに固有のケモカイン受容体を介して作用する。ケモカイン受容体はすべてヘテロ三量体Gタンパク質に共役した7回膜貫通型受容体である。現在までに19種類のケモカイン受容体が同定されているが、膜貫通部位を中心に相同性が高い一方、N末端部分の変異の多い部分で固有のリガンドを識別していると考えられている(表)。


    【ノックアウトマウスの表現形・病態との関わり】

     ノックアウトマウスの表現形について主に免疫系の細胞機能について進んでいる。ヒトおよび疾患動物モデルにおける解析では、動脈硬化症、大腸炎、皮膚炎などの炎症性疾患、自己免疫疾患、HIV-1感染、がんの増殖や転移、予後、抗菌作用について解析が進んでいる(表)。

    図表

    • 表 疾患とケモカイン

    参考文献

    1) 野見山尚之:哺乳類におけるケモカインとその受容体の遺伝的および機能的多様化機構,生化学 82(4):271-289,2010.
    2) Roy I, Evans DB, Dwinell MB: Chemokines and chemokine receptors. Update on utility and challenges for the clinician., Surgery. Jun: 155(6): 961-973, 2014. doi: 10.1016/j.surg.2014.02.006. Epub 2014 Feb 8.
    3) Regulation of circulating neutrophil numbers under homeostasis and in disease. J Innate Immun. 5(4): 304-314, 2013. doi: 10.1159/000350282. Epub 2013 Apr 6.
    4) Mouse Genome Informatics, The Jackson Laboratory. http://www.informatics.jax.org/

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