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  • 可溶性Eセレクチン soluble E-selectin

    2025/08/26 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    Eセレクチン[E-selectin; 別名endothelial leukocyte adhesionmolecule-1 (ELAM-1)CD62 antigen-like family member E (CD62E) leukocyte-endothelial cell adhesion molecule 2 (LECAM2)] セレクチンファミリーの一つで細胞表面に発現する 115kDの糖タンパクである。その構造はセレクチンに共通した構造を有するI型膜貫通タンパク質で、N末端には、Ca2+依存性の糖鎖認識部位を有し、糖鎖リガンドの捕捉に重要であるC型レクチンドメイン、上皮増殖因子様ドメイン、6つのSCR repeats、貫膜ドメイン、細胞内ドメインからなる。

    E-セレクチンは白血球の内皮接着を調節する分子で、炎症性サイトカインIL-1LPSTNFなど)リポ多糖、活性酸素に応じて内皮細胞に発現する。

    炎症時には白血球や造血幹細胞の移動に関与し、亜鉛依存性プロテアーゼ a 分解酵素およびメタロプロテアーゼ 17 (ADAM17)などのプロテアーゼ により細胞外ドメインが切断されることで可溶型が生成される。

    血中可溶性Eセレクチンは、内皮細胞が炎症により活性化する病態、例えば敗血症、動脈硬化症、感染症、糖尿病性血管障害(腎症、網膜症)、ARDS(成人呼吸促迫症候群)、大腸癌などの腫瘍により増加が確認され、活動性、予後を規定するバイオマーカーとして期待される。実用的には、炎症の程度、腫瘍の転移などの活動性、これに対する治療効果など経過を追って観察するのに用いるものであるが、特異的なマーカーではないため他の炎症マーカー、可溶性接着分子などと比較検討が必要と思われる。

    一方、血清E-セクレチン値は、ABO遺​​伝子、FECHP1遺伝子、FUT6遺伝子の遺伝子変異と相関するため、比較検討には注意を要する。

    以下、高値の認められる可能性のある疾患を挙げる。

    ・血管疾患:虚血性心疾患、動脈硬化症、糖尿病性血管障害(腎症、網膜症)

    ・炎症性疾患:移植拒絶、アレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎ほか)、乾癬、関節リウマチや血管炎症候群などの各種全身性自己免疫疾患、敗血症などの重症感染症、サルコイドーシス、呼吸促迫症候群(ARDS)、 全身性炎症反応症候群(SIRS

    ・腫瘍:大腸癌(転移性肝癌)、悪性黒色腫、Hodgkin病、慢性Bリンパ球性白血病、成人T細胞白血病、膀胱癌、膵癌、乳癌、肝細胞癌

     測定方法はELISA法で測定する。

    参考文献

    Cureus. 2024 Jun 9;16(6):e61996. doi: 10.7759/cureus.61996. eCollection 2024 Jun.

    Front Immunol. 2024 Jul 19;15:1401399. doi: 10.3389/fimmu.2024.1401399

    Atherosclerosis. 2021 Oct 15:337:18-26. doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2021.10.006.