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    2015/02/17 作成

    解説

     血管の破綻により出血がおこった際には、循環血中の血小板は速やかに血管の内皮細胞下にあるコラーゲン(膠原線維)に粘着する。これによって血小板は活性化して血小板内に貯蔵されているアデノシン二リン酸(ADP)セロトニンなどの生理活性物質を放出する。次いで粘着血小板上に血小板どうしが凝集しあって、血小板凝集塊(血小板血栓)を形成して一次止血を完了させる。出血時間(bleeding time)は、これらの血小板が主体の一次止血機構の全体を把握出来るスクリーニング検査である。原理的には血小板数が一定以下になると出血時間はそれに伴い延長する。また、血小板数が正常にもかかわらず出血時間が延長すれば、血小板機能異常が疑われる。しかし、以下に述べるように現在行われている測定法では精度が低く、信頼性に欠ける。

     現在我が国では出血時間の測定はDuke法が広く用いられている。Duke法は、1910年にDukeによって提唱された古くからの出血時間測定法で、耳朶を穿刺し湧出してくる血液を濾紙に吸わせて止血するまでの時間を測定するものである。本方法はいくつかの問題点がある。第1に穿刺する耳朶は血管の分布が不均一で、細い血管が穿刺された場合には血小板減少があっても出血時間が正常となる場合もある。第2は穿刺の疼痛による反射によって血管の収縮がおこり出血時間が短めになる可能性がある。第3は穿刺による切創の大きさが術者によって異なることで、結果のバラツキの原因となる。これを改良して、上腕に血圧測定用のマンシェットを用いて40mmHgの圧をかけることによって疼痛による血管収縮を出来るだけ少なくしたIvy法、さらにマンシェットで圧をかけた後、前腕に型板(template)を用いて長さ9mm、深さ1mmの一定の切創を加えるtemplate Ivy法などが提唱されている。Template Ivy法は3方法の中で最も精度の高い検査法であるが、メスのセットなど検査の準備がやや煩雑である。

     前に述べたように出血時間の測定は、血小板が中心の一次止血を容易にスクリーニング検査であるが、現在のところ検査の目的にかなう精度の高い検査法はない。しかしながら、血小板機能を抑制する抗血小板薬が普及して来た現在、抗血小板薬投与後のモニタリング検査としての出血時間測定の代用として、欧米ではPFA-100®システム(platelet function analyzer-100)やVerifyNow®システムなどの簡易な検査装置が、ベッドサイドでも使用できる一種のPOCT(point of care testing)として登場している。全血を用いて簡便に血小板機能を評価できる利点を有するが、我が国の保険体制では使用できず、使い捨てのカートリッジが高価であることなどから、臨床検査として普及するのは困難である。