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  • CD62P(Pセレクチン) CD62P (P-selectin)

    2015/02/17 作成

    解説

    【あらまし】

     活性化血小板で最初に発見されたP(platelet)セレクチン(selectin)(CD62P、CMP-140)は、血小板及び血管内皮細胞の分泌顆粒(それぞれα顆粒及びWeibel-Palade小体)に内在する膜タンパク質で、細胞の活性化に伴う脱顆粒により細胞表面に表出し、E(endothelium)-(CD62E)及びL(lymphocyte)-セレクチン(CD62L)とともにセレクチン・ファミリーを形成する接着分子である.


    【構造と機能】

     PSは相対的分子量が140kDで、その遺伝子は他のセレクチンとともに第1染色体長腕(q21-24)にクラスターを形成する.成熟タンパク質は、C末端にカルシウム依存性の糖鎖結合部位(Cタイプレクチン様ドメイン:LEC)とそれに続くEGF様ドメインと9個の補体結合(CR)リピートの細胞外部分と、膜貫通及び短い細胞内ドメインで構成される.一方、E及びLセレクチンはそれぞれ6個及び2個のCRリピートを有する.

     活性化した血小板や内皮細胞に表出されたCD62Pは、そのカウンター受容体であるPSGL(P-selectin glycoprotein ligand)-1その他の接着分子を介して白血球(顆粒球や単球など)の可逆性接着(テザリング或はローリング)を誘発し、微小循環局所の炎症の成立(β2インテグリンを介した不可逆性細胞接着と血管外移動など)に深く関与する.ムチン様タンパク質であるPSGL-1の先端に存在する糖鎖構造(シアリルLeX保有Oグリカン)及びペプチド構造(硫酸化チロシン残基)と、CD62P分子のそれぞれLEC及びEGF様ドメインが特異的に結合して、ローリングが起こる.


    【病態との関わり】

     CD62Pノックアウトマウスは実験的な炎症局所への反応遅延を認めるが、表現に異常は認めない.種々の組み合わせのノックアウトマウスの検討から、CD62Pは他の二つのセレクチンとともに初期炎症反応を互いに補完し合っていることが推測され、実際にヒトでは、セレクチンの共通した認識糖鎖の先天性異常である重度の易感染症状を示す先天性白血球接着異常症タイプIIが存在する.


    【臨床応用】

     CD62Pは細胞活性化マーカーとして血小板製剤の保存や管理に利用されるとともに、血漿中に存在する可溶性CD62Pも血栓症や炎症の分子マーカーとして利用されている.

    参考文献

    1) Pabinger I, Thaler J, Ay C: Biomarkers for prediction of venous thromboembolism in cancer. Blood 122: 20112018, 2013.
    2) 細胞接着,Bio Science 用語ライブラリー,宮坂昌之,谷原一郎編,実験医学別冊.羊土社,1996.

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