大分類
  • 血管
  • 小分類
  • 治療
  • 静脈フィルター留置術

    2015/02/17 作成

    解説

    1) 定義
     血管壁より遊離した静脈血栓が肺動脈へ流入し肺血栓塞栓症を発症することを予防する目的で、経皮的なアプローチで主として下大静脈内に血栓塞栓を捕捉するためのフィルターを留置する処置を指す。


    2) 静脈フィルターの種類

     静脈フィルターの種類としては、永久留置型フィルター(a)、一時留置型フィルター(b)、回収可能型フィルター(c)がある(図参照)。一定の期間だけフィルターの役割を必要とする症例も多く、最近では一時留置型や回収可能型が用いられる頻度が増えている。


    3) 静脈フィルター留置部位

     静脈フィルターは、主として下大静脈の腎静脈合流部より末梢側に留置されることが多いが、血栓の部位によっては下大静脈の腎静脈より近位側や上大静脈に留置されることもある。


    4) 静脈フィルターの適応

     静脈フィルターの絶対的適応としては、静脈血栓塞栓症を有する症例で抗凝固療法の禁忌例や抗凝固療法下にて肺血栓塞栓症を再発する例などが挙げられる。
     相対的適応には諸説あるが、近位部の大きな浮遊型血栓、心肺機能予備能のない静脈血栓塞栓症、血栓溶解療法・血栓摘除術にて治療を行う広範型肺血栓塞栓症、腸骨下大静脈レベルの深部静脈血栓症に対する血栓溶解療法時などが挙げられる。


    5) 合併症

     静脈フィルター留置術の合併症として、フィルターの誤挿入、傾斜、開脚不全、破損、脚部フックの静脈壁穿孔、穿刺部位での血栓形成・血腫形成・蜂窩織炎、フィルターでの血栓形成、フィルター部での静脈閉塞、深部静脈血栓再発、肺血栓塞栓症再発、穿刺時の空気塞栓・気胸・血胸などが報告されている。

     フィルター永久留置時には、フィルターの血栓閉塞や深部静脈血栓症の再発を予防するために、出血のリスクを考慮したうえで、抗凝固療法を継続するとする考えが一般的である。

    図表

    • 下大静脈フィルター

    参考文献

    1) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008年度合同研究班報告):肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2009年改訂版)(班長:安藤太三).