大分類
  • 血小板
  • 小分類
  • 治療
  • 閉塞性動脈硬化症と抗血小板療法 anti platelet therapy for peripheral arterial disease

    2025/06/10 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    閉塞性動脈硬化症は従来、AtheroSclerosis Obliterans(ASO)と呼ばれていたが、現在は国際的に Peripheral Artery Disease (PAD) と称する。動脈硬化を基盤に下肢動脈の閉塞・狭窄によって、労作時にふくらはぎの痛みなどを来たし、間歇性の跛行を呈する病態である。
    診断は、ABIという下肢血圧(anckle)と上肢血圧(brachial)の比でスクリーニング可能である。ABIの正常範囲は1.00-1.40とされており、0.91-0.99を境界域、≦0.90となればPADと診断される。ただし、>1.40 は石灰化等による偽陰性が示唆されるため、更なる検査が推奨される1)

    観血的治療の適応や実際の治療を行うためには、CTや観血的な血管造影が必要である。

    PADの診断および治療法の選択において、従来のTASCⅡの指針に加えて2024年版ACC/AHA PADガイドライン(ACC/AHA 2024)が登場し、臨床の主要診療指針となっており、first lineとして抗血小板療法が位置づけされている。閉塞性動脈硬化症症例ではすでに冠動脈や頸動脈等に動脈硬化を来していることが多く、その予防のためにアスピリンやチエノピリジン系抗血小板薬が推奨されている。なお、ACC/AHA 2024では低用量リバーロキサバン(2.5 mg ×2)と低用量アスピリン(1日81mg)の併用によって主要な心血管イベントおよび四肢イベントの予防に有効であると示されている

    閉塞性動脈硬化症では、血管が閉塞しても側副血行路が発達し、下肢の阻血壊死を来すことはほとんど無いが、もしそのような危険な状態に陥れば抗血栓療法を含めて個別の対応を要する。次に行うのが症状の緩和である。6分間歩行距離の延長等のエビデンスをもとに、TASC IIで血管拡張作用による症状緩和薬として推奨されていたcAMP分解酵素であるphosphodiesterase3阻害薬シロスタゾールや、セロトニン受容体拮抗薬ナフチドロフリル(本邦未承認)は継続であるが、ペントキシフィリンはACC/AHA 2024では「推奨されない」(Class III, B)とされた。なお、シロスタゾールセロトニン受容体拮抗薬(我が国ではサルポグレラートが使用可能)は抗血小板作用を有するが、TASC IIでの位置づけは、血管拡張・症状改善薬としてである。

    参考文献

    1. 2024 ACC/AHA/AACVPR/APMA/ABC/SCAI/SVM/SVN/SVS/SIR/VESS Guideline for the Management of LowerExtremity Peripheral Artery Disease. Gornik, et al.  Peripheral Artery Disease Guideline.  JACC, 83 (24) 2497–2604