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  • セロトニン受容体 serotonin receptor

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
     セロトニン受容体は、神経伝達物質セロトニンにより活性化される受容体であり、神経伝達物質やホルモン放出の調節や、神経伝達の活性と抑制を制御しているだけではなく、血小板の活性化にも関与している。


    セロトニン受容体の種類】

     セロトニン受容体は構造、シグナル伝達、薬理学的に分類され、7つのセロトニン受容体(5-HT1 – 5-HT7受容体)の存在が明らかになっている。5-HT5、5-HT6、5-HT7受容体は近年クローニングされたが、生理機能に関してはまだ明らかになっていない。セロトニン受容体の多くにサブタイプがあり、その多くは脳をはじめとする中枢神経系に存在しているが、血管平滑筋にも広く発現している(表参照)。血小板には5-HT2A受容体のみ発現が認められている。イオンチャネル型である5-HT3受容体以外はすべて7回膜貫通型のGタンパク質共役受容体である。


    【血栓形成への関与】

     血小板に発現する5-HT2A受容体はGタンパクGqに働き、ホスホリパーゼC(PLC)を活性化させる。細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させることにより血小板の活性化、凝集を増幅する。血管平滑筋細胞も5-HT2Aを発現しており、止血時には活性化血小板から放出されたセロトニンにより血管平滑筋細胞の5-HT2A受容体が血管収縮を引き起こし、血栓形成と血管閉塞を促している。一方、血管内皮細胞には5-HT1B受容体が発現しており、セロトニン刺激を受けると一酸化窒素(nitric oxide; NO)が遊離され、血管弛緩がおこる。両者の役割により正常血管状態が維持されている。抗血小板薬として5-HT2A/2C受容体拮抗薬であるサルポクレラートがある。


    【ノック・アウトマウスの表現形】

     セロトニン受容体5-HT1A欠損マウスでは不安度合いの高い行動を示し、5-HT1B欠損マウスでは攻撃性が増すなど、中枢神経系に関連した行動が認められている。また5-HT2C欠損マウスはてんかんモデルとしても知られている。
     セロトニン受容体5-HT2Bを欠損マウスでは、致命的な拡張型心筋症が認められる。

    図表

    • セロトニン受容体の種類

    参考文献

    1) Jonnakuty C, Gragnoli C: What do we know about Serotonin? J Cell Physiol 217: 301-306, 2008.
    2) 原 啓人:抗血小板療法サルポクレラート,血小板生物学.メディカルレビュー社,809-817.
    3) Machida T, Iizuka K, Hirafuji M: 5-Hydroxytryptamine and its receptors in systemic vascular walls. Biol Pharm Bull 36: 1416-1419, 2013.