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  • 家族性血球貪食症候群 familial hemophagocytic lymphohistiocytosis

    2015/02/17 作成

    解説

    【病態・病因】

     血球貪食症候群は、マクロファージが骨髄で造血細胞を貪食することによって汎血球現象を引き起こし、治療に難渋する疾患である。リンパ腫や自己免疫疾患、悪性腫瘍、重症感染症に伴い発症するものが多いが、家族性に発症する原発性・遺伝性のものがある。狭義の家族性血球貪食症候群(familial hemophaogocytic limphohistiocytosis; FHL)の原因遺伝子は、FHL2はperforin、FHL3はMunc13-4、FHL4はsyntaxin11、FHL5はMunc18-2というようにこれまで4つ同定されており、それらの異常によって生じる家族性血球貪食症候群は常染色体性劣性遺伝する。CD8陽性細胞傷害性T細胞は、ウィルス感染細胞等と免疫シナプスと呼ばれる細胞接着構造を形成し、グランザイムA・B等複数の細胞傷害因子やperforinを含むlytic granuleを免疫シナプスに開口放出する。Perforinはウィルス感染細胞の形質膜に小孔を穿ち、そこを通って細胞傷害因子が侵入し、ウィルス感染細胞にアポトーシスを誘導する。Munc13-4、syntaxin11、Munc18-2は開口放出を誘導するための必須因子である。そのため、それらを欠損するとlytic granuleが開口放出ができず、perforin欠損では細胞傷害分子をウィルス感染細胞に導入できない。このような状態になると、ウィルス感染細胞はそのまま残り、一方、CD8陽性細胞傷害性T細胞は活性化状態のまま残存し、マクロファージも強力な活性化因子であるインターフェロンγ等のcytokineを産生し続け、いわゆるcytokine stormの状態となる。そして、過度に活性化されたマクロファージが骨髄で造血細胞を貪食し、汎血球減少となるのが血球貪食症候群である。治療が確定すれば、重症であれば骨髄移植を要する。Perforin遺伝子の軽微な変異で、60歳代で初めて血球貪食症候群となったFHL2症例の報告もあり、治療法は臨床症状を鑑みて決定するべきかと思われる。
    【疫学】
     確定例は我が国では年間10例前後と思われる。
    【検査と診断】
     骨髄で血球貪食像を認め、上記の遺伝子の異常を抗体や遺伝子解析で確定できれば診断可能。明らかな家族歴がありながら上記に以上を認めない症例もあり、未知の遺伝子異常によると考えられている。我が国では、小児科の研究グループが有り、依頼すれば診断していただける。

    【治療の実際】
     化学療法から、骨髄移植まで重症度や病態にとって分けられた推奨されている治療プロトコールが存在する。
    【その他】
     その他血球貪食症候群をきたす遺伝性疾患として、X連鎖リンパ増殖症候群(x-linked lymphoproliferative syndrome; XLP)や白子症を伴う免疫不全症候群としてGriscelli症候群,Chediak-Higashi症候群,Hermansky-Pudlak 症候群2 型などが知られている。血小板濃染顆粒、CD8陽性細胞傷害性T細胞や色素細胞の色素顆粒はともにリソソーム関連小器官と分類され、その形成や輸送・開口放出の機序に多くの共通因子を用いるため、白子症と血球貪食症候群が合併しやすいのである。また、血小板顆粒放出障害を伴うのも多い。