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  • 線維芽細胞 fibroblast

    2015/02/17 作成

    解説

    ■概要
     線維芽細胞(fibroblast)は、結合組織を構成する代表的な細胞の1つで、塩基好性を示す。組織内では、膠原線維束の長軸にそって存在し、細胞質突起を多数保持した扁平ないし紡錘形の細胞である。楕円形の核を有し、ゴルジ装置や粗面小胞体が豊富で、細胞外基質合成の盛んな場所(創傷治癒部など)では特に発達している。活動期にあるものをfibroblast、休止期のものをfibrocyte(線維細胞)という。変異型として、原形質内にアクチンフィラメントが増加しているものを筋線維芽細胞(myofibroblast)というが、光顕的区別は難しい。
     間葉系幹細胞から分化する比較的未分化な細胞であり(図1)、脂肪細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞に分化能もあるとされ、最初のiPS細胞樹立には線維芽細胞が使用された。成人ではほとんど分裂しないが、必要に応じ分裂する(創傷治癒等)。


    ■機能

    1)細胞間物質の合成:間質の線維成分であるコラーゲンエラスチン等のほか、ヒアルロン酸やグリコサミノグリカンなどの合成に関与する。
    2)貪食作用:大食細胞に劣るものの貪食能力を有する。
    3)収縮:筋線維芽細胞は、平滑筋細胞同様、セロトニン、ブラジキニンで収縮し、組織収縮に関与する。
    4)コレステロール代謝:腸粘膜固有層、肺、真皮の線維芽細胞様細胞には脂肪滴が存在し、ビタミンAや脂質代謝に関わる。

    5)組織因子を発現し血液凝固に関与する。


    ■病態との関わり
    1)線維化:脳以外では、線維化部位に集積し、コラーゲン性細胞外基質の過剰産生・蓄積を担う。
    2)創傷治癒:受傷後2-3日程度で細胞の集蔟と増殖による肉芽組織の形成のほか、主に筋線維芽細胞による創傷の組織収縮と肉芽組織の瘢痕化に寄与する。

    図表

    • 図1.間葉系幹細胞の分化

    参考文献

    1) 梶川欽一郎:結合組織,金原出版,1984.