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平均血小板容積(MPV)・血小板分布幅(PDW) mean platelet volume (MPV)・platelet distribution width (PDW)
解説
【概要】
平均血小板容積(MPV)および血小板分布幅(PDW)などの,血小板容積指数(PVI)は血算を測定することで得られる安価で簡便なパラメータである.MPVは血小板の平均容積であり,赤血球でいうと平均赤血球容積(MCV)である.一方,PDWは血小板の大きさの分布幅を反映しており,数値が大きいほど血小板容積に不均一性があることになる.
【基準値】
基準値設定のための健常者対象,測定する機種の原理や算出法により多少の差はあるが,MPVは7-11 fL,PDWは10-17%程度である.>
【測定法・測定原理】
血液算定のための自動分析器などにより,血小板数とともに算出されるが,その分析器の原理(電気抵抗方式と光学的測定方式)により計測値に違いが生じる.図1に,血小板容積分布のヒストグラム(platelet volume)を示す.20%のレベルでの分布幅がPDW(SD法)と定義されており,分布幅の絶対値で表すので,単位はfLである.変動係数(CV)を用いて算出することもある.
MPVは次の式によって計算することができる.
MPV(femtoliters; fL)= [plateletcrit (%) / platelet count (×109/L) ] ×105
Plateletcrit(Pct)は,血小板体積の比率を表し(例えば,電気抵抗方式で測定したのであれば,血小板のインパルス,つまり活動電位の合計と同等である),赤血球であればいわゆるヘマトクリット値である.
【病態との関わり】
一般的には,血小板数とそのサイズは反比例の関係が存在しているが,PVIの変化は血小板造血やその機能変化の指標となると考えられている.血小板数が消費性に減少すると,反応性に血小板造血が生じて大きな血小板を作り出される.したがって,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のような病態では,血小板サイズが大きいことが想定される.逆に骨髄形成不全など血小板産生低下に関連した血小板減少では,MPVは低下する.PDWも同様な傾向が認められている(図2).また,極度にPVIが高い場合には,先天性血小板減少症(May-Hegglin異常やBernard-Soulier症候群)および骨髄異形成症候群などがある.ただし,脾臓摘出後は血小板プール機能がなくなるために,大小さまざまな血小板が認められるようになるために注意を要する.
一方,PVI測定は心血管リスク増加のマーカーとして,診断的有用性を有する可能性があるとの報告もある.これは,大血小板のほうが小さいものと比較して,顆粒量や血小板表面の受容体が多く,活性化されやすいとの基礎データから想定されており,臨床症例での有用性が検討されている.ただし,MPV測定では,測定原理による測定値の差,血算用採血管に含まれる抗凝固剤であるEDTAによる血小板容積の時間的な変動(MPVはEDTAにより増加)などの技術的な問題もあり,精確性が欠けていることも考慮しなくてはならない.
図表
引用文献
1) 松野一彦:【血液検査実践マニュアル】血球計数検査 血球計数検査 自動測定法の実際 血小板数,検査と技術 28:699-702,2000.
2) Kaito K, Otsubo H, Usui N, Yoshida M, Tanno J, Kurihara E, Matsumoto K, Hirata R, Domitsu K, Kobayashi M: Platelet size deviation width, platelet large cell ratio, and mean platelet volume have sufficient sensitivity and specificity in the diagnosis of immune thrombocytopenia. Br J Haematol 128: 698
参考文献
1) Briggs C: Quality counts: new parameters in blood cell counting. Int J Lab Hematol 31: 277
2) Leader A, Pereg D, Lishner M: Are platelet volume indices of clinical use? A multidisciplinary review. Ann Med 44: 805