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  • アディポネクチン adiponectin

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
     アディポネクチン(adiponectin)は、1995年にヒト脂肪細胞のcDNAライブラリーから脂肪細胞特異的タンパク質として同定された。アディポネクチンはC1qファミリーに属する.

    【分子量】
     244アミノ酸からなる分子量約30kDの分泌タンパク質。

    【血中濃度】
     血中に5~30μg/mlの濃度で存在している。

    【構造と機能】
     N末端側のコラーゲン様ドメインとC末端側のC1q様球状ドメインより構成される.血中では3量体~18量体の多量体として存在する。
     アディポネクチンは脂肪細胞特異的に産生・分泌されるが、BMI(body mass index)とは逆相関を示す。つまり、肥満になり脂肪量が増加するとアディポネクチンの血中濃度は低下する。この機序の詳細は明らかではないが、TNF-αとアディポネクチンは互いに他の産生を転写レベルで抑制するため、肥満によりTNF-αが増加しアディポネクチンの血中濃度が低下すると考えられている。

    【病態との関係、ノック・アウトマウスの表現形】
     アディポネクチンと疾患との関連であるが、アディポネクチン濃度はBMIにて変動するため、年齢およびBMIを一致させ検討すると、糖尿病患者や冠動脈疾患において血中アディポネクチン濃度が低下していることが明らかとなった。
     アディポネクチン欠損マウスを用いた研究にて、アディポネクチンには抗糖尿病作用および抗動脈硬化作用があることが示されている。アディポネクチン欠損マウスは普通食餌では糖尿病などの代謝異常を呈さないが、高脂肪/高ショ糖食餌で飼育すると糖尿病を発症し、その機序としてはアディポネクチン欠損によりインスリン抵抗性になることが明らかにされている。言い換えるとアディポネクチンにはインスリン感受性を高める作用がある。またアディポネクチンは、血管平滑筋の増殖抑制、単球/マクロファージの機能抑制、血管内皮細胞における接着分子発現の低下など種々の作用により抗動脈硬化作用を発揮する。
     さらにアディポネクチン欠損マウスを用いてHe-Neレーザー惹起頚動脈血栓モデルにて解析すると、アディポネクチン欠損マウスではレーザーによる血栓形成が野生型マウスに比べ亢進しており、さらにこの亢進はアデノウイルスベクターを用いてアディポネクチンを補充することにより改善する。アディポネクチンを野生型マウスにおいて過剰発現させると、動脈血栓モデルにおける血栓の形成が抑制される。以上より、アディポネクチンは抗糖尿病作用、抗動脈硬化作用に加え、抗血栓作用も有している多機能タンパク質である。

    参考文献

    1) 冨山佳昭,船橋徹:アディポサイトカインと血栓症,血栓と循環 14:286-290,2006.
    2) Kato H, Kashiwagi H, Shiraga M, et al: Adiponectin acts as an endogenous antithrombotic factor. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol 26: 224-230, 2006.