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活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC) activated prothrombin complex concentrate(APCC)
解説
APCC(Activated prothrombin complex concentrate)は活性型プロトロンビン複合体製剤のことで血漿分画製剤である。
【作用機序】
APCC中にはビタミンK依存性凝固因子であるプロトロンビン、凝固第VII因子、凝固第IX因子、凝固第X因子が含まれるほか、活性型凝固因子としてトロンビン、活性型第VII因子、活性型第IX因子、活性型第X因子が含まれる。これら因子の複合的な作用によってバイパス止血効果が発揮されると考えられている。なかでもプロトロンビンと活性型第X因子は即時的なトロンビン生成を行うことでAPCCのバイパス止血作用の主要な役割を担っていると考えられている。APCC1単位のバイパス止血活性とは高力価第Ⅷ因子インヒビターを含有する標準血漿のAPTTを50%短縮させるものと定義されている。
【使用方法と効果】
通常、急性出血に対してはAPCC50-100単位/kgを8-12時間間隔で1-3回静注するが、1日最大投与量は200単位/kgを超えないようにしなければならない。定期的に投与することで出血を抑制する方法としては70-100単位/kgを1日おきに投与する。APCC中には第IX因子が含まれているために、血友病Bインヒビター患者では輸注後に既往免疫反応を起こす可能性があり、血友病Aインヒビター患者でもAPCC中に含まれる微量の第VIII因子フラグメントのために同様にインヒビターの上昇がみられることがある。止血効果は患者間での個人差が大きいだけでなく、同一患者でも出血部位や出血の重症度,出血後の時間経過によって止血効果に差がみられることが知られている。また、連用により止血効果が減弱もしくは消失する症例が報告されており、他のバイパス止血治療製剤に変更することで効果が得られる場合がある。
【止血効果のモニタリング】
APCCの止血効果のモニタリング検査として、現時点で最適なものはない。主にTEG(現在では同様の原理で行われるROTEMが主流)やPTもしくはAPTTの短縮効果によるモニタリングが行われる。
【副作用・禁忌】
まれではあるが、APCCの有害事象としてDIC や心筋梗塞といった血栓症が報告されている。このうち、80 %以上がAPCCの200単位/kg/日を超える過量投与や肥満、脂質異常症などの危険因子の存在が指摘されている。播種性血管内凝固症候群(DIC)を起こしている患者では使用禁忌であり、心筋梗塞や急性血栓症・塞栓症の患者では原則禁忌である。抗線溶薬であるトラネキサム酸との同時使用は血栓症リスクの観点から、原則として行わない。