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ヘパリンコファクターII heparin cofactor II
解説
【分子量、半減期、血中濃度】
ヘパリンコファクターII(HCII)は、480個のアミノ酸からなる分子量約66 kDaの一本鎖糖タンパク質で、主として肝臓で産生されるセリンプロテアーゼインヒビター(SERPIN)の一つである。血中濃度は約100 µg/mLで半減期は2.53日。最近、選択的スプライシングにより生成するSERPIN活性を持たないHCIIが報告され、その分子量は約55 kDa。
HCIIによるトロンビンの阻害は、典型的なSERPINによるセリンプロテアーゼ阻害様式を示し、アンチトロンビンよりも高濃度のヘパリン(1~5 U/mL)の存在下にトロンビンにより反応部位P1-P1’(Leu444-Ser445)が切断された後、トロンビン-HCII複合体を形成することによりトロンビン活性を阻害する。HCIIによるセリンプロテアーゼ阻害はトロンビンに特異的で、活性化第X因子(FXa)や他のセリンプロテアーゼを阻害しない。また、HCIIのトロンビン阻害活性はヘパリン以外にはデルマタン硫酸によって促進される。このことから、HCIIはへパラン硫酸プロテオグリカンが存在する血管内皮とデルマタン硫酸が多い細胞外マトリクスでのトロンビン阻害に関与していると考えられている。
HCII欠損マウスは正常に出産され重篤な血栓傾向は示さないが、内皮障害を誘発すると、野生型マウスに比較して動脈血栓の形成が促進されることから、HCIIは動脈血栓の形成に関与していることが示唆されている。
参考文献
1) 林辰弥,鈴木宏治:血液凝固・線溶制御セルピンの構造と機能,日本血栓止血学会誌 23(5):481-493,2012
2) Bano S., Fatima S., Ahamad S., et al: Identification and characterization of a novel isoform of heparin cofactor II in human liver. IUBMB Life 72(10):2180-2193, 2020.