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  • 血餅退縮 clot retraction

    2024/11/26 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】
     血小板を含んだ血餅は、血小板に豊富に存在する収縮性タンパク質の作用により収縮して強固な血栓となる。この現象を血餅退縮と呼び、血餅中での血小板膜糖タンパクGPIIb/IIIa(インテグリンαIIb/β3)とフィブリンの結合が重要な役割を果たしている。

    【分子機構】
     GPIIb/IIIaを先天的に欠損するグランツマン血小板無力症の血小板は血餅退縮を起こさないことから、血餅退縮にGPIIb/IIIaが不可欠であることは古くから知られていた。また、それ以外にもフィブリノゲン、カルシウム、トロンビン、血液凝固第XIII因子(FXIII)、FcγRIIa、温度が血餅退縮に不可欠な要素とされている。血液凝固反応によって生じたトロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに変換して血栓の形成を促進するとともに、血小板表面のトロンビン受容体に作用し、血小板を活性化させる。さらにフィブリンとGPIIb/IIIaの結合によりoutside-inシグナルが活性化する。このシグナル経路はSrcファミリーキナーゼとPLCγ2依存性にミオシン軽鎖(MLC)をリン酸化してアクチン-ミオシンの収縮を引き起こすことで、血餅退縮を促進する。また、SrcファミリーキナーゼはGPIIb/IIIaの細胞内ドメインチロシン残基をリン酸化して、非筋肉ミオシン重鎖IIAを介した血餅退縮の形成を促進する。また、FcγRIIaに対する抗体が血餅退縮を抑制することからFcγRIIa→ Syk→ PLCγ2経路も血餅退縮の形成に関与しているとも考えられる。フィブリンと血小板との結合は膜上のラフトで生じ、この血餅退縮機序にFXIIIが重要と考えられている。

    【病態との関わり】
     血小板無力症タイプIで血餅退縮能は欠如する。血小板減少症、フィブリノゲンの減少や機能異常で血餅退縮能の減弱がみられる。

    参考文献

    1) Cohen I, Gerrard JM, White JG: Ultrastructure of clots during isometric contraction. J Cell Biol 93: 775-787, 1982.
    2) Suzuki-Inoue K, Hughes CE, Inoue O, Kaneko M, Cuyun-Lira O, Takafuta T, Watson SP, Ozaki Y: Involvement of Src kinases and PLCgamma2 in clot retraction. Thromb Res 120: 251-258, 2007.
    3) Boylan B, Gao C, Rathore V, Gill JC, Newman DK, Newman PJ: Identification of FcgammaRIIa as the ITAM-bearing receptor mediating alphaIIbbeta3 outside-in integrin signaling in human platelets. Blood 112: 2780-2786, 2008.