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  • 交差混合試験(クロスミキシング試験) cross mixing test

    2015/02/17 作成

    解説

    測定方法:

     活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)延長症例の鑑別診断には交差混合試験が有用である.交差混合試験には,患者血漿と健常人血漿を混合後直ちに凝固時間を測定する「即時反応」と,混合血漿を2時間37℃でインキュベーション後に測定する「遅延反応」がある.縦軸にAPTT測定値,横軸に血漿混合比(%)としてグラフを作成し視覚的に判定する(図).交差混合試験における混合血漿の混合比率および測定ポイント数は標準化されていないが,即時反応では患者血漿比率0, 10, 20, 50, 100%の5ポイントで,遅延反応は患者血漿0, 50, 100%の3ポイントで行うことを推奨したい.


    判定方法および臨床的意義

     判定は現状では視覚的な判断で行う.
    1)凝固因子インヒビター:即時反応では,反応曲線が「下に凸」,0%と100%を結ぶ「直線上」,または「上に凸」と様々なパターンがあるが,遅延反応では「上に凸」がより明確になる.
    2)ループスアンチコアグラント(LA):即時反応で「上に凸」または「0%と100%を結ぶ直線上」であり,遅延反応でもほぼ同様のパターンを示す.
    3)内因系凝固因子欠損症(血友病など):反応曲線が即時反応で「下に凸」で,遅延反応でも同様のパターンを示す.


    異常値に遭遇した際の対応:

    1)凝固因子インヒビター:凝固第VIII因子(VIII因子)またはその他の内因系凝固因子(IX, XI, XII因子)活性を測定し,ベセスダ法によるインヒビター力価の測定を行う.

    2)LA:APTT系LAの確認試験であるスタクロットLA(Roche社)で凝固時間の延長がリン脂質依存性であることを確認する.また,他の抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体,抗β2グリコプロテインI抗体など)も測定する.

    3)凝固因子欠損症:VIII因子またはその他の内因系および共通系凝固因子(I, II, V, X因子)活性を測定する.判断に困った際には,専門に行っている施設に相談したほうがよい.


    その他のポイント:

     交差混合試験は標準化されていないため,実際の測定において多くの問題が生じる.特に用いたコントロール血漿によって大きく結果が異なることがある.また,LAは判断に苦慮することが多く,APTT試薬はLA感受性の良好なものを用いる.

    図表

    • 交差混合試験

    参考文献

    1) 家子正裕:ループスアンチコアグラント,日本検査血液学会編,スタンダード検査血液学(第2版).東京,医歯薬出版,2013,170-171.
    2) 家子正裕:クロスミキシング試験を臨床に生かすには,医療と検査機器・試薬 35:867-872,2012.