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アミロイドーシスと凝固・線溶
解説
【疾患の概要】
アミロイドーシスは各種タンパク質がアミロイド変性を起こし各種臓器に沈着する疾患で、沈着が局所に限られる限局性アミロイドーシスと、多数の臓器に沈着する全身性アミロイドーシスに分類される。アミロイド沈着のため臓器機能障害を呈するが、沈着する臓器はアミロイドの種類によって異なり、臨床症状も様々である。ALアミロイドーシスは、免疫グロブリン軽鎖がアミロイド変性した疾患であり、全身性アミロイドーシスの1/3以上を占める。多発性骨髄腫などに合併する場合もあるものの、軽度の形質細胞の増加しか認められない形質細胞異常症で発症する場合もあり、この様な場合は原発性アミロイドーシスとも呼ばれる。ALアミロイドーシスでは出血傾向を呈する場合があり、その原因としてアミロイド沈着による血管の脆弱性とともに凝固線溶系異常が示されている。
【凝固異常】
ALアミロイドーシスにおける凝固系の異常としては凝固第X因子の低下が報告されている。同因子低下の原因はアミロイドに吸着されるためと考えられている。インヒビターが産生されている訳ではないため、補正試験では補正される。ただし、多発性骨髄腫に合併した場合などはモノクローナルに上昇した免疫グロブリンの影響で、補正されない場合もあるため注意が必要である。一方、新鮮凍結血漿の輸血などで凝固第X因子を補充した場合、半減期は短縮しているため、その上昇は一過性である。凝固第X因子の低下は軽度(10 IU/dL以上)の場合が多く、10 IU/dL以下の症例は少ない。頻度も8.7%から27%と総ての症例で認められるものではない。
【線溶異常】
ALアミロイドーシスではすべての症例で血栓形成によらない線溶系の活性化(一次線溶)が惹起されている。その線溶活性化はウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)によるもので、ALアミロイドーシス症例の骨髄形質細胞は免疫学的にuPA陽性を示す。またアミロイドーシスを合併していない形質細胞異常症に比較すると、ALアミロイドーシス症例ではプラスミンα2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が上昇しており、その値が1.5 µg/mL以上の場合にはALアミロイドーシスを積極的に疑うべきである。線溶系活性化の詳細な機序については不明であるが、線溶系の活性化とアミロイドの沈着量に関連がある可能性が示唆されており、末梢幹細胞移植併用の大量化学療法で形質細胞異常症そのものは改善しても、プラスミンα2プラスミンインヒビター複合体の高値は継続する。いずれにせよ線溶系の制御が低下するほどの病態に陥ったり、フィブリノゲン分解による低フィブリノゲン血症を呈することは稀である。
参考文献
1) 内場光浩,畑裕之,今村隆寿,安東由喜雄:AL-アミロイドーシスと線溶異常,日本血栓止血学会誌 21:9-15,2010.