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  • エラスチン elastin

    2015/02/17 作成

    解説

    【概要】

     血管壁の主要な細胞外物質。血管壁の弾性を保つ構造タンパク質。大動脈の乾燥重量の約50%を占める。


    【分子量】

     約70kDa


    【構造と機能】

     分子間架橋により縮れた網目状構造をとる(図)(1)。このため外力に対してゴムのような弾性を示すと考えられている。エラスチンは2種類の繰り返し構造を持つ。Val-Gly-Val-Ala-Pro-Glyは1分子あたり2個存在し、線維芽細胞の遊走、血管平滑筋細胞の遊走抑制、細胞増殖と収縮型への分化誘導作用、血管内皮細胞のNO産生刺激等が報告されている(2)。この配列を認識する受容体として67kDラミニン・エラスチン結合タンパクが報告されている(3)。血小板にも67kDラミニン受容体が発現するが(4)、両者が同一であるかは不明である。血管カテーテル内をこの配列から成る合成ペプチドで被覆すると開存率が高いとの報告が為されている(5)。また可溶化したエラスチンは、トロンビン、コラーゲン、A23187刺激による血小板凝集を抑制すると報告されているが(6)、可溶性エラスチン受容体や血小板抑制メカニズムの詳細は不明である。Gly-Val-Gly-Val-Proも1分子あたり2個存在し、弾性力に重要な配列と考えられている。細胞増殖や分化遊走への活性は報告がない。


    【病態との関わり】

     加齢や動脈硬化により血管壁のエラスチンは減少し、血中で可溶性エラスチンが増加する。動脈硬化巣ではエラスターゼの産生が増加し、血管壁のエラスチンの分解が亢進する。その結果血管壁の弾性が低下する。エラスチン自体の異常により引き起こされる疾患としてはWilliams症候群(7q11.23欠失)が挙げられる。特徴的な妖精様顔貌、大動脈弁上狭窄や肺動脈弁上狭窄、心室中隔欠損や心房中隔欠損等の心血管異常、空間認識能の低下や成長障害を特徴とする奇形症候群である(7)。Marfan症候群はエラスチン結合タンパクフィブリンの遺伝子異常が原因の一つとされ、弾性線維の形成異常により弾性線維が脆弱となり、大動脈解離や大動脈瘤などの血管病変を呈する(8)。

    図表

    • エラスチンの特徴

    引用文献

    1) Molecular Biology of THE CELL 5th Edition, 1190.

    参考文献

    1) Molecular Biology of THE CELL 5th Edition, 1190.
    2) Faury G, Garnier S, Weiss AS, Wallach J, Fülöp T, Jacob MP, Mecham RP, Robert L, Verdetti J: Action of tropoelastin and synthetic elastin sequences on vascular tone and on free Ca2+ level in human vascular endothelial cells. Circ Res 82: 328336, 1998.
    3) Mecham RP, Hinek A, Griffin GL, Senior RM, Liotta LA: The elastin receptor shows structural and functional similarities to the 67-kDa tumor cell laminin receptor. J Biol Chem 264: 1665216657, 1989.
    4) Tandon NN et al: Biochem J. Mar 1: 274(Pt 2): 535-542, 1991.
    5) Woodhouse KA, Klement P, Chen V, Gorbet MB, Keeley FW, Stahl R, Fromstein JD, Bellingham CM: Investigation of recombinant human elastin polypeptides as non-thrombogenic coatings. Biomaterials 25: 45434553, 2004.
    6) Sekiya K, Okuda H: Inhibitory action of soluble elastin on thromboxane B2 formation in blood platelets. Biochim Biophys Acta 797: 348353, 1984.
    7) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1249/
    8) http://www.nanbyou.or.jp/entry/2389

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