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第XII因子欠乏症・異常症 factor XII deficiency / abnormality
解説
【病態・病因】
常染色体劣性遺伝の疾患である。凝固第XII因子(FXII)はプレカリクレインおよび高分子キニノゲンとともに接触因子に分類される。肝実質細胞により産生され、血液が異物面と接触すると最初に活性化される接触因子であるが、in vivoにおける止血には必要とされない。このため、凝固第XII因子(FXII)欠乏症は凝固時間の延長は認めるが、通常は出血症状を呈することはなく、凝固スクリーニング検査で発見されることが多い疾患である。F12遺伝子のエクソン1の46C/T変異は、翻訳開始コドンATGから4塩基上流にある遺伝子多型でタンパク質翻訳に影響し、血漿FXII活性低下をもたらす。東洋人ではこの活性低下をきたす多型頻度が高く、東洋人は白人の約半分のFXII活性および抗原量しか持たない。
【疫学】
世界各国で約300症例が報告されている。わが国では平成25年度血液凝固異常症全国調査(厚生労働省委託事業)により、男性16名、女性9名、合計25名が報告されている。
【検査と診断】
FXIIは内因系凝固の開始段階で機能するため、存在しない場合には活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が著明に延長する。プロトロンビン時間(PT)は基準範囲内である。臨床的には出血傾向も血栓傾向も認めないために、術前検査などで偶然発見されることが多い。FXII活性が著明に低下し、クロスミキシング試験で欠乏症パターンを呈した場合、先天性FXII欠乏症・異常症を疑う。
【治療の実際】
臨床的な出血の原因にはならず、大手術を行なう場合でも欠乏症に対する治療は必要ない。APTTの著明な延長と臨床症状の乖離の要因として、FXIIを介さない他の内因系凝固の側復路の存在の仮説が考えられている。
【その他のポイント・お役立ち情報】
接触因子は凝固のみならず線溶にも大きく関与するため、FXII欠乏症では線溶低下より血栓症になりやすいとの報告もある。FXIIの血中半減期は50~70時間である。
参考文献
1) Gordon EM, Donaldson VH, Saito H, Su E, Ratnoff OD: Reduced titers of Hageman factor (factor XII) in Orientals. Ann Intern Med 95: 697
2) 公益財団法人エイズ予防財団 血液凝固異常症全国調査委員会:血液凝固異常症全国調査平成25年度報告書:10,2014.
3) 遠藤安行,間宮繁夫,三浦亮他:血栓症を主訴とした先天性第XII因子欠乏症,内科66,983-985,1990.