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  • CD31(PECAM-1)

    2015/02/17 作成

    解説

    【分子量・構造】

     CD31(PECAM-1: platelet endothelial cell adhesion molecule, 血小板内皮細胞接着分子-1)は分子量約130kDaのI型膜貫通型糖タンパク質、711個のアミノ酸からなる免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)に属する細胞表面レセプターである。構造は574アミノ酸残基よりなる6つのC2タイプイムノグロブリン(Ig)様細胞外ドメイン、19アミノ酸残基よりなる1つの膜通過ドメイン、118アミノ酸残基よりなるセリン/スレオニン残基と2つのチロシン残基を有する細胞内ドメインから構成される(図1)。細胞外ドメインは内皮細胞間の接着に関与し、内皮細胞単層を安定化させている。一方、細胞内ドメインは細胞質内情報伝達分子との結合を介して情報伝達に関与している。

    【発現・機能】

     発現は血管内皮細胞に多く認められ、その他には血小板・単球・好中球・好酸球・T細胞サブユニット・NK細胞・がん細胞の一部にも認められる。血管内皮細胞上での発現は臓器移植拒絶組織や高内皮細静脈(HEV)、炎症部位などで強く認められる。CD31は細胞内ドメインに2つのチロシンリン酸化部位ITIM領域(Y663、Y686)を有し、このITIM領域がリン酸化し、さらにSHP-1、SHP-2チロシンフォスファターゼと結合してoutside-inのシグナル伝達を制御している1)。CD31はインテグリンαvβ3やCD38などの結合を介して、循環血液中の白血球が組織内へ遊出する際の経血管内皮細胞間隙の擦抜けの働きをしている。血栓形成や血管新生および創傷治癒の過程における相互作用の働きがある。

    【CD31ノックアウトマウス】
     CD31ノックアウトマウスを用いた炎症モデルでは、野生型マウスと同様に炎症部位への白血球の浸潤、血小板凝集および血管新生が認められた報告がある2)。しかし、CD31を抗体でブロッキングしたin vivoにおける実験では白血球遊走が抑制され、CD31は炎症過程に関与していることが報告されている3)

    【病態との関わり】
     血小板は内皮細胞と接着することにより血栓を形成し、循環血液中の白血球や癌細胞は血管内皮細胞と接着し組織内へ遊出されるため、CD31は炎症惹起・血液凝固・組織修復・腫瘍浸潤など幅広い生体の防御機構に関与し、血栓症・心臓血管障害などの血流に影響を及ぼす疾患との関わりが強い。

    図表

    • CD31の模式図

    参考文献

    1) 増田道隆他:PECAM-1を介した血管内皮細胞のメカノセンシング,日薬理誌124:311-318,2004.
    2) Duncan GS, Andrew DP, Takimoto H, Kaufman SA, Yoshida H, Spellberg J, de la Pompa JL, Elia A, Wakeham A, Karan-Tamir B, Muller WA, Senaldi G, Zukowski MM, Mak TW: Genetic evidence for functional redundancy of Platelet/Endothelial cell adhesion molecule-1 (PECAM-1): CD31-deficient mice reveal PECAM-1-dependent and PECAM-1-independent functions. J Immunol 162: 30223030, 1999.
    3) Dangerfield J, Larbi KY, Huang MT, Dewar A, Nourshargh S: PECAM-1 (CD31) homophilic interaction up-regulates alpha6beta1 on transmigrated neutrophils in vivo and plays a functional role in the ability of alpha6 integrins to mediate leukocyte migration through the perivascular basement membrane. J Exp Med 196: 12011211, 2002.

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