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  • ウロキナーゼ urokinase

    2025/06/18 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【一般名】
    ウロキナーゼ

    【適応】
    脳血栓症(発症後5日以内で、コンピューター断層撮影において出血の認められないもの)
    末梢動・静脈閉塞症(発症後10日以内)

    【用法及び用量】
    <脳血栓症>
    1日1回60,000単位を約7日間投与する。
    <末梢動・静脈閉塞症>
    初期1日量60,000〜240,000単位、以後は漸減し約7日間投与する。
    ※かつては急性心筋梗塞の冠動脈血栓の溶解のために480000〜960000単位を24000単位/4mL/分で冠状動脈内に注入が行われていた。しかし最新の急性冠症候群ガイドラインにはその記載はない。

    【副作用・禁忌】
    投与量が過量となると出血性合併症が起こりうる。出血傾向を有する患者への投与は原則禁忌である。具体的な禁忌は以下の通りである。
    1)止血処置が困難な患者:頭蓋内出血,喀血,後腹膜出血等
    2)頭蓋内あるいは脊髄の手術又は損傷を受けた患者(2ヵ月以内)
    3)動脈瘤のある患者
    4)重篤な意識障害を伴う患者
    5)脳塞栓又はその疑いのある患者
    6)デフィブロチドナトリウムを投与中の患者

    【作用機序】
    ウロキナーゼは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ(uPA)とも呼ばれるセリンプロテアーゼのひとつである。肝臓で一本鎖の酵素前駆体(プロウロキナーゼ)として産生され、プラスミンやカリクレインによって二本鎖のウロキナーゼに活性化される。ウロキナーゼは血中に分泌される不活性な酵素前駆体であるプラスミノーゲンを分解し、酵素活性をもつプラスミンに変換する。生じたプラスミンは、フィブリン血栓の溶解や細胞外マトリックスを分解する線溶反応の主役となる。

    【半減期・代謝経路】
    患者4例に125I標識ウロキナーゼを単回静脈内投与したときの放射活性の血漿中半減期は2~7分及び17~33分であり、二相性を示して速やかに消失した。

    【その他のポイント・お役立ち情報】
    ウロキナーゼは日本でかつてよく用いられた第一世代の血栓溶解薬である。脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]によると、脳梗塞急性期における経静脈的血栓溶解療法は遺伝子組み換え型組織型プラスミノーゲン・アクティベータ(rt-PA、アルテプラーゼ)のみでエビデンスが認められているが、ウロキナーゼについてその記載はない。ウロキナーゼを用いた経動脈的局所血栓溶解療法において、来院時のNIHSSスコアが4~22と中程度〜重症で、CT上梗塞巣がないかまたは軽微な所見にとどまり、発症6時間以内に治療開始可能な中大脳動脈M1またはM2部閉塞において社会復帰率が優れるという報告があるが、本邦ではウロキナーゼの動脈内投与は保険適応外である。

    ウロキナーゼは肺動脈血栓塞栓症、冠動脈血栓症、下部深部静脈血栓症、末梢動脈血栓塞栓症、透析用アクセス血栓症が保険適用となっている。しかし、近年ウロキナーゼは大幅な出荷制限に回復の見通しが立たない状況である。今後も供給の継続は困難であり、実際ウロキナーゼの冠動注用製剤は、2023年11月で出荷が停止された。

    この状況を鑑みて2025年度に末梢動脈疾患ガイドラインフォーカスアップデート(日本循環器学会/日本血管外科学会合同ガイドライン)が発表され、新規の血栓吸引デバイスが国内で保険収載されることとなった。

    引用文献

    脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023

    2025年末梢動脈疾患ガイドラインフォーカスアップデート(日本循環器学会/日本血管外科学会合同ガイドライン)

    日本循環器学会:循環器病の診断と治療に関するガイドライン,急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)