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インヒビター(抗凝固因子)測定 iInhibitor assay
解説
【概要】
凝固因子に対する抗体をインヒビターと呼び、血友病などの先天性出血性疾患の治療で補充される凝固因子に対して生じる同種抗体と、加齢や分娩などを背景に生じる自己抗体がある。自己抗体である後天性インヒビターは、抗凝固第VIII因子抗体が圧倒的に多く、次いで抗凝固第V因子抗体が続く。その他の凝固因子、特にビタミンK依存性凝固因子に対する抗体に遭遇することは稀である。凝固因子活性の阻害様式には、抗体濃度に比例し、活性を完全に阻害するタイプ1インヒビターと、抗体濃度に比例せず、不完全に阻害するタイプ2インヒビターの2通りがある。同種抗体ではタイプ1、自己抗体ではタイプ2が多い。以下に主要なインヒビターである凝固第VIII因子インヒビターの知見について述べる。
【測定原理】
インヒビターの存在とその力価は凝固因子阻害活性で測定され、Bethesda(ベセスダ)法が用いられる。この阻害活性はBethesda単位(BU/ml)で表現され、1BU/mlは正常血漿1ml中に存在する凝固因子活性を50%阻害する(半減させる)力価と定義されている。基準値は“検出されない”であり、0.5BU/ml以上を陽性と判断する。
【測定法】
被検血漿の希釈列(希釈にはイミダゾール緩衝液〔0.05mol/Lイミダゾール含0.1M NaCl、pH7.4〕を用いる)を正常血漿と当量混和したものをサンプルとし、37℃で2時間加温した後の残存因子活性を測定する。緩衝液と正常血漿を混和したものを対照として用意し、同様の測定を行う。片対数グラフの縦軸に残存因子活性%を対数で、横軸にBU/mlをとり「25%, 2BU/ml」「50%, 1BU/ml」「75%, 0.415BU/ml」の3点をプロットした検量線を作成する(図1)。測定した各サンプルの残存因子活性%(サンプルの測定値/対照の測定値×100)から検量線を用いてBU/mlを求め、これに希釈倍率を乗じ、被検血漿のBU/mlを算出する。
【ポイント】
1. 各凝固因子インヒビターの測定に応用できる。
2. 検量線が片対数であることから、残存因子活性のわずかな差異がBU/mlに大きく影響する。従って、精度高くインヒビターを測定するには、精度の高い因子活性測定が必要である。
3. インヒビターのタイプによって力価の求め方を変える。
残存因子活性が25~75%の範囲となるような希釈を行い、この範囲内の複数のポイントから算出し、平均する。
②タイプ2インヒビターの場合
希釈列において残存活性が50%に最も近いポイントから算出する。
4. 0~0.5BU/mlの範囲を精度よく測定するのは困難である。この範囲を精度よく測定できる方法としてNijmegen(ナイメゲン)変法が報告されている。しかしこの方法は、手間がかかり経済的でないためあまり浸透していない。
5. Bethesda法では表現されない、すなわち因子活性を阻害しない抗凝固因子抗体(Non-Neutralizing Antibodies)も存在する。
図表
参考文献
1) Kasper CK, Aledort L, Aronson D, Counts R, Edson JR, van Eys J, Fratantoni J, Green D, Hampton J, Hilgartner M, Levine P, Lazerson J, McMillan C, Penner J, Shapiro S, Shulman NR: Proceedings: A more uniform measurement of factor VIII inhibitors. Thromb Diath Haemorrh 34(2): 612, 1975.
2) Verbruggen B1, Novakova I, Wessels H, Boezeman J, van den Berg M, Mauser-Bunschoten E: The Nijmegen modification of the Bethesda assay for factor VIII:C inhibitors: improved specificity and reliability. Thromb Haemost 73(2): 247-251, 1995.