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外傷と線溶
解説
外傷後の凝固線溶系の変化は、1)生理的止血・創傷治癒反応と病的血管内凝固症候群、および2)外傷急性期反応と外傷後期反応に分けて考えると理解しやすい。
生理的止血・創傷治癒反応では、外傷急性期には凝固亢進(トロンビン産生)に引き続き線溶活性が高まる(プラスミン産生と二次線溶によるDダイマー上昇)。しかし、止血・創傷治癒が完成するまでの期間は創傷局所のフィブリン血栓形成維持の目的で抗線溶作用を持つプラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)が増加する。外傷後期に止血・創傷治癒が完成すると凝固亢進とPAI-1による線溶抑制は消失し、線溶再活性化が起こり不要となったフィブリン分解が起こる。以上から、外傷後の生理的線溶系変化は、線溶亢進・線溶抑制・線溶再活性化である。
病的変化である播種性血管内凝固症候群(DIC)では、外傷急性期には外傷性ショックに伴う組織低灌流により血管内皮細胞から組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)が遊離し線溶活性が著しく亢進する。このためoozing型の異常(大量)出血が持続し外傷急性期のDICは線溶亢進型DICに分類される。その後PAI-1の上昇かつ持続的高値により線溶活性は抑制され、外傷後期には線溶抑制型DICが発症する。外傷急性期の線溶亢進型DICと後期の線溶と抑制型DICは独立して発症するのではなく、基礎病態である外傷および外傷性ショックが制御されず、前者が後者に持続して移行することが特徴である。以上から、外傷後DICにおける病的線溶系変化は、高度線溶亢進・持続的線溶抑制である。
図表
参考文献
1) Gando S: Disseminated intravascular coagulation in trauma patients. Semin Thromb Haemost 27: 585
2) Gando S, Sawamura A, Hayakawa M: Trauma, shock, and disseminated intravascular coagulation: lessons from the classical literature. Ann Surg 254: 10
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