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アンジオポエチン1・2 angiopoietin-1/-2(Ang-1/Ang-2)
解説
概要
アンギオポエチン1・2(Ang-1、Ang-2)は、多量体を形成する糖タンパク質で、血管内皮に発現するTie2のリガンドである。両者は同程度の親和性を有し、Ang-1はアゴニスト、Ang-2はアンタゴニストとして作用する。血管構造の成熟・安定化や血管・リンパ管新生にも重要な役割を果たすほか、造血幹細胞ニッチにおいて造血幹細胞の維持に重要な役割を担っている。
構造(図1)
1)分子量:70kDa(糖鎖を除くと55kDa)。
2)構造:N末側のホモ会合に関わるクラスタリングドメイン、ミオシンに類似したcoiled-coilドメイン、C末側のTie-2と結合するフィブリノゲン様ドメインからなる。
Ang/Tie2の機能(図1)
1)Ang-1分子の会合で、Tie2も会合しシグナル伝達が開始する。AKT、eNOS系により内皮生存、VEカドヘリンにより接着安定化で、血管透過性を負に制御する。またapelin/APJ系による血管径拡大や、NFκB経路抑制による抗炎症的作用も発揮する。一方で、細胞外基質との接着が解離する状態では、血管新生に作用する2面的機能も持つ。
2)Ang-2は低酸素や炎症刺激で誘導され、Ang-1の拮抗的阻害で内皮と周皮細胞の相互作用が破綻し、血管透過性を亢進する。
ノックアウトマウスの表現型
1)Ang-1-/-:壁細胞と内皮の接着解離や、拡張し大小の階層性がない血管が形成される。心臓の肉柱形成不全もあり胎生致死的である。
2)Ang-2-/-:血管異常は軽度で、催炎物質による炎症惹起に対して抵抗性となる。一方、Ang-2はリンパ管新生ではアゴニストなため、欠損でリンパ管異常から乳糜性腹水を生じる。
病態との関わり
2)炎症でのAng-2発現亢進は、炎症細胞の血管外遊出を促進する。
図表
参考文献
1) 血管新生研究の最先端.医薬ジャーナル社,2013.
2)van Meurs M, Kümpers P, et al. Crit Care. 13(2):207, 2009.