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出血性線溶異常症 Bleeding disorders caused by hyperfibrinolysis
解説
概要
線溶制御因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(PAI-1)、α2–プラスミンインヒビター(α2-PI、α2–アンチプラスミン:α2-APと同一)およびトロンボモジュリン(TM)/トロンビン活性化線溶阻害因子(TAFI)のいずれかの先天性機能不全により、出血傾向または止血不全をきたす。侵襲時や月経時の少量の失血後に起こる予期せぬ大出血が特徴であり、欠損因子によっては遷延する出血とともに筋肉内出血、関節内出血、臓器出血なども認められる。
なお、原因不明の出血症状を呈する線溶活性促進病態において、PAI-1低値とともにその活性不全が疑われるにもかかわらず遺伝子異常が指摘されない病態もある。
原因
PAI-1、α2-PI、TM/TAFIのいずれかの単一遺伝子変異により線溶抑制活性不全が生じ、重篤な出血をきたす。いずれも常染色体潜性遺伝形式をとり、ホモ接合体では過度の線溶促進により止血血栓が早期に溶解し、出血をきたす。ヘテロ接合体では各因子の血中濃度は低下するが重篤な出血症状は認めない。
症状
PAI-1欠乏症では、月経時に超大量出血を認める。その他、流産、外科治療後の後出血や創傷治癒遅延などを認める。α2-PI欠乏症では、後出血のほか、歯肉出血から関節内出血、骨髄内出血に至るまで、幅広い重症度を示す。TM異常症では、繰り返す皮下・筋肉内血腫、卵巣出血や外科侵襲後の出血を認める。
検査と診断
出血症状が高度でない、あるいは非出血時には、血小板数、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲンは基準値内を示す。出血時には、血漿Dダイマーあるいはフィブリン分解産物(FDP)、血漿プラスミン・プラスミンインヒビター複合体(PIC)は基準値より高値を示す。血液凝固第XIII因子活性は基準域内である。血漿α2-PI活性が基準値下限未満、PAI-1もしくはTM/TAFIの活性不全を各クロット溶解アッセイにて検出することが診断には必須である。
治療
出血時あるいは出血予防としてトラネキサム酸や新鮮凍結血漿が用いられる。TM異常症ではトロンボモジュリンアルファ(※保険適用外)が投与される。今後、治療法の確立が望まれる。
引用文献
難病情報センター 出血性線溶異常症(指定難病347)より引用https://www.nanbyou.or.jp/entry/28622
参考文献
- 出血性線溶異常症診断基準 血栓止血誌. 2025; 36: 61-67
- 鈴木優子, 岩城孝行, 浦野哲盟. 線溶制御不全による出血症の診断に必要な検査. 日本検査血液学会雑誌 2025; 26: 121 – 129.