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人工血管置換術
解説
【概要】
病変部の動脈をポリエステル線維やフッ化エチレン膜などで作られた人工血管で置換する術式。代用血管の使用により、大動脈疾患の手術治療が可能となった。
【適応疾患】
大動脈瘤(粥状動脈硬化性、結合組織病、炎症性、感染性、外傷性など)
大動脈解離
【人工血管の種類】
- ポリエステル製グラフト
長所:柔軟で縫合に適する。耐久性がある。生体適合性に優れる。
短所:線維間からの血液漏出を予防するための前処置が必要。
- シールドグラフト
ポリエステル製人工血管に血液漏出予防のために、ゼラチン、コラーゲン、アルブミンなどで表面処理を施したもの。
長所:頻用品、緊急手術に有用。
短所:異物反応による発熱。コーティング技術の改良により減少している。
- 分枝付きシールドグラフト
長所:弓部、腹部分枝の再建や側枝からの送血時に有用で手術時間の短縮につながる。
- ステントグラフト
自己拡張型の金属ステントをポリエステルあるいはポリテトラフロロエチレン (PTFE) に逢着もしくは固定したもので、経カテーテル的に動脈病変部位(大動脈瘤・大動脈解離など)に内挿する。
長所:開腹、開胸の必要がなく低侵襲、手術治療のリスクが高い症例
短所:確実な固定が難しいこと、耐久性、塞栓症、エンドリーク(動脈瘤内への血液流入)
- ポリテトラフロロエチレングラフト
線維ではなく材料を圧出して一体成形して作成したもの。腹部大動脈、腸骨動脈、大腿動脈の再建に用いられている。
長所: 血液漏出がほとんどない。長期の開存性に優れる。
短所:柔軟性に乏しく、屈曲する。針穴からの出血がやや多い。慢性期に血管壁から血漿成分の漏出があると報告されている。
【新しいグラフト】
- バイオグラフト
吸着性のポリマーグラフトに自己の骨髄細胞を播種したもの、特に小児の大静脈と肺動脈の再建に臨床応用されている。
- 異種タンパク剤を含まないもの
2層の基材布の間に生体内安定性を有する合成ゴム材が挿入された3層構造で、これにより異種蛋白剤による表面処理なしで血液漏出を低減し、異常発熱を回避できる可能性がある。
- 脱細胞組織を用いた小口径人工血管
脱細胞処理したダチョウ頸動脈に血管内皮前駆細胞の接着を促すペプチド処理を施し、内径2-4mm、長さ20-80cmの小口径人工血管が開発され、動物モデルにおいて良好な成績が報告されている。
参考文献
1) 新心臓血管外科テキスト. 安達秀雄、小野 稔、 坂本喜三郎、志水秀行、宮田哲郎編、中外医学社2016.
2) 山岡哲二:人工血管,脱細胞組織をベースにした再生型小口径血管,人工臓器 42:184-187,2013.