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  • 直接的P2Y12阻害薬 direct P2Y12 antagonist

    2015/02/17 作成

    解説

     血小板が活性化することで血小板内に貯留されているアデノシン二リン酸(ADP)が放出され、周囲の血小板を活性化させる。ADPは血小板膜上のADP受容体であるP2Y12受容体及びP2Y1受容体を刺激して血小板を活性化させる。チカグレロルは未変化体がP2Y12受容体と非競合的に結合し阻害することから直接的P2Y12阻害剤といわれている。チカグレロルは、P2Y12受容体と可逆的に結合して阻害するので、未変化体の血中濃度と連動して薬効が出現し、消失する。また、クロピドグレルとは異なり、未変化体が直接受容体を阻害するために阻害効果の発現が早い。

     一方、P2Y12受容体を阻害する薬剤としてのクロピドグレルとプラスグレルはともにプロドラッグで内服後に体内で代謝を受けて活性体となり、P2Y12受容体と不可逆的に結合する。そのため、薬剤の効果は血中濃度が低下しても持続し、効果は約1週間持続する。
     チカグレロルの長所は、緊急経皮冠動脈形成術時に速やかに阻害作用が発揮でき、またバイパス術などの手術が緊急に必要な場合でも、受容体への結合が可逆的であることから、阻害作用が速やかに消失し出血のリスクを低下することができる。急性冠動脈症候群患者18,624例を対象にチカグレロルとクロピドグレルを比較したPLATO試験(a study of platelet inhibition and patient outcomes)のデータにより米国食品医薬品局(FDA)は承認をした。この試験では、チカグレロルはクロピドグレルと比べ、心血管死と心筋梗塞発症抑制を示したが、脳卒中発症抑制について差は認めなかった。また、ステント内血栓症発症リスクを抑制した。出血リスクに関しては差がなかったと報告されている。日本では、開発中である。
      他の薬剤として、カングレロルとエリノグレルがある。どちらも未変化体が、P2Y12受容体と競合的、可逆的に結合して抑制する。カングレロルは静注薬として開発され、CHAMPION PHOENIX試験では主要評価項目である48時間以内の死亡、心筋梗塞、血管再建による虚血、ステント血栓症でクロピドグレルと比べ有意に低下させた。2015年6月にFDAは承認した。エリノグレルは経口薬、静注薬として開発され、臨床試験が進行中である。

    図表

    • 図 ticagrelor(Pharmacotherapy 2014;34(10):1077–1090より引用)
    • 図 cangrelor(Pharmacotherapy 2014;34(10):1077–1090より引用)
    • 図 elinogrel(Thromb Haemost 2012; 108: 1024–1027より引用)

    参考文献

    1) Wallentin L, Becker RC, Budaj A, Cannon CP, Emanuelsson H, Held C, Horrow J, Husted S, James S, Katus H, Mahaffey KW, Scirica BM, Skene A, Steg PG, Storey RF, Harrington RA; PLATO Investigators, Freij A, Thorsén M: Ticagrelor versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes. N Engl J Med 361: 1045–57, 2009.