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後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP) acquired thrombotic thrombocytopenic purport
解説
【病因】
全身の微小血管に血小板血栓が形成されることで発症する。その原因としてフォン・ヴィレブランド因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13活性が低下することが報告されている。後天性TTPの場合は、ADAMTS13に対する自己抗体によって同活性が低下する。自己抗体には、活性阻害抗体(インヒビター)と非阻害抗体があり、非阻害抗体は血液中からのクリアランスを増加させることでADAMTS13活性を著減させると考えられている(参照:「ADAMTS13」の項参照)。
【疫学】
海外からの報告では100万人に4人/年発症とされている。20-40歳代の女性に多いとされていたが、日本国内のデータベースには乳児から80歳代の高齢者まで登録されており、40歳代と60歳前後に発症ピークが認められる。国内では40歳代は女性が多いが、60歳以降は逆に男性優位である。
【検査と診断】
歴史的には、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、発熱、精神神経症状の古典的5徴候で診断されていたが、5徴候すべて揃うのは病期が進行してからであり、前2者のみでも同様の病態であることが明らかとなった。そのため、原因不明の血小板減少と溶血性貧血を認めた場合、TTPを疑いADAMTS13活性を測定し、10%未満であればTTPと診断する。ADAMTS13自己抗体が陽性であれば後天性血栓性血小板減少性紫斑病 (後天性TTP) と診断する。なお、ADAMTS13活性が著減しない場合でも、古典的5 徴候などの臨床症状でTTPと診断されることがあったが、現在ではTTPとは診断されない。このようなADAMTS13非著減例はTTP類縁疾患と考えられるようになり、今後の病態解析が期待される。
【治療の実際】
後天性TTPで唯一効果が証明されている治療は、血漿交換である。循環血液量の1-1.5倍の新鮮凍結血漿(FFP)を用いて、血小板数が15万/uLに上昇した2日後まで連日実施する。多くの症例で、血漿交換にステロイドパルス療法など副腎皮質ステロイド療法が併用されることが多い。この2つに加えて、VWFに対する抗体製剤カプラシズマブが後天性TTPの急性期の治療として推奨されている。血漿交換が無効な場合や再発症例に対して、リツキシマブが使用できる。
【その他のポイント】
ADAMTS13インヒビター力価が2 bethesda単位/ml以上の高値の症例は、予後が不良であることが報告されており、血漿交換に抵抗性である可能性がある。
引用文献
松本雅 則, 宮川義隆, 小亀浩市, 上田恭典, 和田英夫, 日笠聡, 八木秀男, 小川孔幸, 酒井和哉, 宮田敏行, 森下英理子, 藤村吉博. 血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023. 臨床血液 64: 445-460, 2023
参考文献
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