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  • 薬剤性血小板減少症 drug-induced thrombocytopenia

    2022/07/05 更新
    2015/02/17 作成

    解説

    【病態・病因】

    薬剤性血小板減少症(DITP)は、非免疫性と免疫性機序によって引き起こされるものに大別される。非免疫性機序での代表的薬剤は抗癌剤であり、その多くが骨髄抑制作用を有するため汎血球減少の一環として見られる。特異な非免疫性機序が知られている薬剤としてリネゾリトとボルテゾミブがある。リネゾリトは抗菌剤で用量依存性の骨髄抑制が見られ、特に血小板減少が前面に出やすい。ボルテゾミブは巨核球からの血小板放出が抑制されるため血小板減少をきたす機序が想定されている。その他、抗ウイルス薬は巨核球造血を抑制する作用があり、血小板減少をきたしやすい。

    免疫学的機序による血小板減少症は薬剤投与5-10日後に出現することが多く、血小板数は2万/µL以下まで低下して重篤な出血症状を呈することもまれでない。6つの異なる機序が知られており、それぞれの頻度と代表的薬剤を表1に示す。報告の多い薬剤としては、キニン、キニジン、バクタ、バンコマイシン、ペニシリン、リファンピシン、カルバマゼピン、セフトリアキソン、イブプロフェン、ミルタザピンがある。ヘパリンは「ヘパリン起因性血小板減少症」の項で詳述されている。


    【検査と診断】

    薬剤性血小板減少症を確実に診断できる検査は存在しない。免疫学的機序による血小板減少症では薬剤存在下でのみ血小板と結合する抗体がフローサイトメトリーなどで検出できれば有力な診断根拠になるが、臨床検査としては行われていない。臨床経過から血小板減少の原因と思われる薬剤を推定し、その薬剤中止後、血小板数が改善することを確認する以外に診断を確定する方法はない。


    【治療】

    通常は薬剤を中止してから薬剤半減期の4-5倍経過後に血小板数は上昇してくる。重篤な出血に対しては血小板輸血を行うが、原因薬剤を中止していないと輸血効果は見られない。ステロイドや免疫グロブリン療法が行われることもあるがその有用性は不明である。


    【その他の情報】

    これまでに薬剤性血小板減少症の原因として報告された薬剤、栄養サプリメント、食品のオンラインリストがある1)

    図表

    引用文献

    1) Platelets on the Web. http://www.ouhsc.edu/platelets/

    参考文献

    1) Aster RH, Bougie DW: Drug-induced thrombocytopenia. N Engl J Med 357: 580-587, 2007.
    2) Arnold DM, Nazi I, Warkentin TE, Smith JW, Toltl LJ, George JN, Kelton JG: Approach to the diagnosis and management of drug-induced immune thrombocytopenia. Transfus Med Rev 27: 137-145, 2013.