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新生児血小板減少症(NAIT) neonatal thrombocytopenia (NAIT)
解説
【病態・病因】
新生児が血小板減少をきたす原因は多岐にわたるが、このうち、妊婦が胎児の血小板特異抗原(父親由来HPA)に対する同種抗体を産生し、その抗体が経胎盤性に胎児に移行して胎児ないし新生児の血小板が破壊される病態を新生児血小板減少症(neonatal alloimmune thrombocytopenia;NAIT)という。これまでに35種類のHPAが同定されているが、主なHPAの特徴を表に示す。また、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の妊婦から生まれた新生児の血小板減少症も自己抗体による同様の機序で生じる。
【疫学】
抗HPA-1a抗体によるNAITは、10-20%で脳出血をきたすほど重篤であり、白人に最も多くみられる。しかし、日本人の99.9%以上はHPA-1a抗原を発現しているため、妊婦が同抗原に対する抗体を産生する可能性は低く、本邦での抗HPA-1a抗体によるNAITはまずみられない。日本人ではHPA-4不一致によるNAITが最も多いが、血小板減少と出血症状は軽微なことが多い。抗HLA抗体によるNAITの存在には議論がある。
【検査と診断】
診断のポイントは母親血清中の抗HPA抗体の検出と、両親のHPA抗原(遺伝子)タイピングで不適合があることの証明である。抗HPA抗体は、父親(または新生児)の血小板と母親の血清をインキュベートして、血小板に結合した抗体をフローサイトメトリーやELISAで測定する。抗HPA抗体の検出やHPA抗原タイピング用のキットが市販されている。
【治療の実際】
軽症例は経過観察でよいが、血小板数が3万以下で、出血症状のある症例では脳出血のリスクがあり、HPA適合血小板輸血が適応となる。母親の血小板はHPA適合なので照射後、輸血可能である。この場合、洗浄血小板の輸血が望ましいが、洗浄しなくても臨床的には問題ないとの報告がある。さらに、免疫グロブリン大量療法を併用する。
【その他のポイント】
ITP合併妊娠において、約14%にNAITがみられるが、その90%以上は血小板数5万/μl以上である。また、帝王切開で新生児脳出血を回避できるエビデンスはない。
図表
参考文献
1) 飯野美穂ら:本邦における新生児血小板減少症の集計調査,日本輸血細胞治療学会誌 56:508-514,2010.
2) Bonstein L, Haddad N: Taking a wider view on fetal/neonatal alloimmune thrombocytopenia. Thromb Res 151 (Suppl.1): S100-S102, 2017.